もし家を建てるなら

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「みんなのベンチ」イベント講話 「木と人間の関わり」

 

はままつフラワーパーク

理事 塚本こなみ


静岡県磐田市出身、現在浜松市在住。

日本女性樹木医第一号。一級造園施工管理技士。

1996年、樹齢130年、直径1mに及ぶ大藤の「あしかがフラワーパーク」への移植を成功させ、一躍有名になる。以降、浜松八幡宮 雲立の楠(静岡県指定天然記念物)の治療、京都府平等院 藤育成指導など実績多数。2013年から、はままつフラワーパークを運営する公益財団法人浜松市花みどり振興財団理事長。

 

 

木と人間の関わり

塚本さん(以下、敬称略):
モデルハウスの会場にお越しのオーナーのみなさま。本当にうれしく思います。
今日は「木と人間との関わり」、一緒に生きていくってどういうことかな?ということを簡単にお話させていただければと思います。

みなさん、私たちが呼吸できるのはどうしてでしょうか?空気、酸素があるから?
では、その酸素を誰が作ってくれているか、分かる人!(客席より挙手)・・・ありがとうございます。

子どもたちの前でお話しするときは、「みなさん『鼻』つまんでー。・・・苦しくなったら離していいですよー。」って申し上げるんです。

実は、酸素を作って空気中にいっぱい出してくれているのは樹木なんですね。
特に天竜地方の山の木!ここにもドウダンツツジやソヨゴなどの雑木類も生えていますが、その天竜の木の葉っぱが空気中の二酸化炭素を吸うんですね。

葉っぱの裏には、空気の孔って書くんですが、「気孔」があります。顕微鏡でみると(マスクを外し、口で気孔の形をしながら)こういう格好をしています。これが松の葉っぱだと一枚で420個も穴が空いています。そこから二酸化炭素を吸収して、そして今度は何を出すかというと、・・・酸素を出す!で、夜になると皆さんと同じように木も眠るんですね。そして、昼間とは逆に二酸化炭素を出している。人間と同じ呼吸を葉っぱがしているんです。

知らなかったでしょう?そういう形で昼間は活動をして、酸素を空気中にいっぱい出して、あとは海とか雨とかの水、川とか滝とかの水が酸素を放出してくれます。

だから、この地球上の樹木はとても大切。
私たちの命を維持するために、必要な酸素を出してくれているから。

 

 

それと、もう一つ。
3年くらい前に静岡県の「木の家コンクール」の審査員として、木の家を何十軒も見せていただいたんです。その時に「あぁ!木の家で育つお子さんって、きっと心が豊かになるだろうなぁ。」って、すごく実感しました。

わたくしが尊敬する、法隆寺の建物をずっと管理をしていた宮大工さんの「木のいのち 木のこころ」という本があります。その本を読むと、1000年前の法隆寺を修復するのに、木を外してきてカンナをかけると「今もヒノキの香りがする。」っていうところがあって、私はここが一番好きなんです。

建築の「材」として、木の命の形は変わりましたが、「木」って1000年経っても私たちを守っている。そして今でもヒノキの香りがする!そんな家にずっと住めるというのは、どんなに素敵なことか!

 

皆さん、森や山に行ったときに何か気持ちが良くなりませんか?ココロがふわーんとしたり、「あぁ、空気がおいしい!」とか、「心がやさしくなってるんだな。」とか思いませんか?

それは、それぞれの木の中に持っている成分が、木が呼吸する時に出てくる成分なんです。だから、ヒノキの香りにもとっても癒される。そういうことなんですね。
ぜひ、生きている木々を!

 

 

わたくしは、樹木医という木の医者です。木の医者が木を切っちゃいけないんじゃない?と質問されます。木には命があり、いずれ枯れたりとか具合の変化が必ずあるんですね。でも、健全な木は切っても、家などの「材」という形に変えて、別の命を与えられることで人間と共に暮らしているって思ってるんです。

木から酸素をもらっているということ、そして、木にも命があるということ。その木の命をいただいた材を使ってお家になったり、私たちの生活を豊かに支えてくれたりしているんだっていうことをね、みなさん感じていただければと思います。

今日、このモデルハウスで見せていただいた大黒柱、太い木。この、丸太から取った後の残りの木を使って、皆さんの力でベンチを作ります。

 

フラワーパークに私が就任したときに天竜森林組合さんにお願いして100基つくってもらったの。ですけど、やっぱり広いし、お客様も増えてゆっくりしていただこうと思うと、足りないんですね。そんな話をアイジースタイルハウスさんにお話ししたところ、「じゃあ、オーナーの皆さんとフラワーパークにプレゼントします!」と言ってくださったので、とっても楽しみにしています。
綺麗な花の中、桜の中、多くの方がベンチに座る姿が見えます!どうぞよろしくお願いいたします。
短い時間ではありましたが、どうぞみなさまお元気で!コロナに負けないように、豊かに暮らせます様に。
ありがとうございました。

 

講演後の対談(対談者:新聞社記者、弊社常務 立田裕樹)

記者:
国内の手つかずの森林が増えたせいか、今、日本人の多くが花粉症に悩まされていますね。

 

塚本:
花粉は、大体70年代、80年代くらいから飛んでいるの。戦後、20年代から40年代の植林で増え続けて、昭和40年代後半からひどくなったの。

 

記者:
天竜のヒノキを使うサイクルっていうのは、昔はあったんですよね?

 

塚本:
ヒノキと杉は植える場所が違うんです。水が欲しいのは杉、で、檜は尾根。

立田:
でも、輸入材に押され、伐ってもお金にならないから、そのままどんどん太っちゃって。

 

塚本:
私たちはフラワーパークで庭を作ったり、木を植えたりするときも、ヒノキの丸太を持ってきてもらって、それで支柱にしたりしています。
持ちが違うの。杉だと3年から5年で腐っちゃう。ヒノキはもっと持つ。だから私は、建築業者じゃないけど、そういう点から見てもやっぱりヒノキが良いですね。腐りにくい。

 

 

記者:
それでも、なかなかヒノキが使われないっていうのは、不思議な感じがしますね。

 

塚本:
やっぱり杉の方が、植えた量が多いの。

 

立田:
それと、コストの面ですね。

 

記者:
それで「歩留りを良くする」っていう画期的なアイデアを思い付いたのですか?

 

立田:
そうですね。そこにソファーの下地があるんですけど、アレは僕の中で自信作なんです。笑
本当に側(がわ)、チップになっちゃうようなものを綺麗な所だけ選別して家具として生まれ変わってるんですよ。無節の!寿司屋のカウンターみたいな。
端材(側財)を商品化することで「全体のコストの帳尻」が合うんですよね。ヒノキ丸太の端材を使わずに大黒柱だけに使っていたら、僕らも本当にコスト合いません。

 

 

記者:
これは製材というか、発注してこの材木を作ってもらうんですか?

 

立田:
加工した時に分けて、節があるものは中の見えない下地にしていて、キレイなものだけ取って階段材や家具にしたり。今、ドア(建具)も作ってるんですけど。室内のドアは、全部、丸太の周辺部から取れた端材で製作しています。

 

記者:
今、実際建っているお家っていうのは、柱とか梁とかだけじゃなくて、そういう建具とかにも使われてるから結構多分檜の香りってすると思う…。

 

立田:
あぁ、そうですね。

 

塚本:
いいですね。

 

記者:
日本人ってヒノキのそういった特性に早い段階で気が付いて、住宅に活かたり、生活に活かしたりっていう歴史があるってことなんですかね?

 

塚本:
さっき言った法隆寺も1000年、1200年昔の…それがもうヒノキ。

 

記者:
特に社寺ですね。

 

 

塚本:
命、ココロを育むっていう意味では、合板の塗料とか接着剤のニオイがしたりするんですよ。合板合材を使ったお家っていうのは、ニオイが違う。

 

立田:
全く違いますね。

 

塚本:
あぁ木の良い匂い。もう私の家はボロボロで古いもんだから、近いうちに将来建てたいなと思ってるんですけど。笑

 

立田:
健やかというか、心から落ち着くじゃないですか、本物の木の匂いは。化学的にも建材まみれの家とちゃんとした自然のモノを使っている家との子どもの学力差とか、やっぱり出ているんですね。

 

塚本:
出てきますね。やっぱり、安定感が違うんですね。心の落ち着きとか、絶対木の家に住まわせた方が良い!と確信しました、その時に。別にアイジーさんだから言っている訳ではなくて。

 

記者:
木を使っているから良いって事ではなくて?合板とかでも、なんとなく木だったら良いと素人は思いがちなんだけれど。そういう事でもなくて?

 

塚本:
立証されていますよね?

 

立田:
そうです。合板とかってボンド、接着剤とか石油、化学物質とか当然含むんで。今の家って気密性が高いじゃないですか?だから家の中にこもるんですよね。当然、有害物質を常に吸ってる環境…

 

塚本:
目がチカチカとか、精神的にも良くない。

 

立田:
そういう意味では、僕らの家は、合板っていう貼り付けたものは一切使っていないので、見えない所までこだわってやっているんです。更に、今回このヒノキの家造りは、二年くらい前かな?森林組合など複数の業者さんたちと共同してやったんですけど、元々は長持ちさせたい、もっと住宅を長持ちさせるにはどうしたらいいのか?と考えました。例えば、やっぱり構造材、骨組みをヒノキにした方がいいでしょう、耐久性がいいでしょうと。ただ、価格がもう…ヒノキが高いのは知っていたんですけど、色々調べていくと、こういうやり方をしたらできるって所まで分かったので、ここまで辿り着いたんですね。そういう意味では、素晴らしく良い家だと自負しています。

 

 

塚本:
やっぱり杉の木材使ったよりもヒノキの家というのは割高になります?

 

立田:
全然違います。(笑)!なので、側材で建具や家具を作ったりとか工夫してやっているんです。例えば、普通の梁材の歩留りって4割切るくらい低いんですよね。

 

塚本:
そんなに低いの?

 

立田:
ええ。製品化されたものを販売するっていう仕組みになっているんですよ。だから製材屋さんは言われた製品を作るだけ。残った側材や端材は在庫しておいて、何かあれば使うみたいな感じです。その使わない分の原価が梁材に転化されるんですよね。だから、使う部分が4割しかないのに、流通段階ではほぼ、まるまる1本の金額になっているんです。それが、ヒノキが流通しなかった主な理由でもあるし、木こりさんから僕ら建築業者の手に来るまで、いまだそういう商流(商的流通)、常識っていうのがあって。
林家さんは木を伐る者、製材屋さんは製品を作る者、僕ら建築業者は建てる者という風に分断されちゃって来たんですよ。だから…

 

塚本:
それを一括でやれば。

 

立田:
そうです。それをみんなで集まって話をするだけ。案外早かったです解決策は、たったそれだけ。

 

記者:
地元の材、地元の木のベンチがフラワーパークの中に置かれるというのは、とても意味がある事ですよね。

 

塚本:
そうですね。建築資材に使われる様なものが、こうしてベンチに姿を変えて。これを皆さんが作って下さったというのが素晴らしいですよね。

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