2024.6.09
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はままつフラワーパーク
理事 塚本こなみ
静岡県磐田市出身、現在浜松市在住。
日本女性樹木医第一号。一級造園施工管理技士。
1996年、樹齢130年、直径1mに及ぶ大藤の「あしかがフラワーパーク」への移植を成功させ、一躍有名になる。以降、浜松八幡宮 雲立の楠(静岡県指定天然記念物)の治療、京都府平等院 藤育成指導など実績多数。2013年から、はままつフラワーパークを運営する公益財団法人浜松市花みどり振興財団理事長。
株式会社アイジーコンサルティング 常務取締役
立田 裕樹
1973年生まれ。
1996年現アイジーコンサルティング入社。
1999年リフォーム事業、2006年新築事業、2016年不動産×リノベーション事業の新規立上げなどIGの事業領域を拡げる。
全社の企画・マーケティングも担当し、社会性と経済性をバランスさせた事業展開を実践している。
立田:
5 年前のカンブリア宮殿、本当に感動しました。一番感動したポイントが、職人さん、庭師さんたちとの関係。
僕らの業界もそうですけど、関係ができるまであんまり意見を聞かないっていうか。
しかも塚本さん女性じゃないですか?庭師って特にこだわりというか…
塚本さん(以下、敬称略):
男の世界です。
立田:
本当に男の世界で。それをね、職人の意識を変革して、さらにそれだけじゃなくて経営まで立て直したっていう、その手腕…。しかも樹木医。もう、凄い方だなぁと思って。
そして、縁があって去年、当社の社員総会に来ていただいてご講演いただいたんですけど、その時の話も含めて本当に大尊敬してるんですよ。だから今日は、すごく嬉しくて。
塚本:
足利で藤を動かしたのが45の時だったと思うんですね。で、年上の人たちばっかり。
中には、もう70で「俺は藤をもう50年以上やっているんだ。」っていうおじいさんもいます。
そういう方達を前にして、「この度、藤の移植の陣頭指揮をさせていただきますが、まず皆様と約束をしていただきたいんです。わたくしの指示が違っていると思ったら質問して下さい。それで、擦り合わせして意見調整しましょう。」と。それで、「確定したことは、気に入らなくても私の指示通りにやってくださるという約束を、今ここで最初の顔合わせで約束をしてください。そのお約束がいただけなかったら、この仕事はお受けできません。」って、オーナーさんを前にして職人さん達を並べて言ったんですよ。まだ契約も何もしていない時です。
立田:
カッコ良い…(笑)。
塚本:
そしたら皆さんが「約束します。」と言ったので、やらせていただいたんです。みなさんが、てんでバラバラに自分のやり方でやられたら出来ないんですね。
カンブリアに出たのは愛知県の現場の時で、藤の花の名所で、「咲かない。咲かないから立て直しを…。」ということで、新たに公園を作り直すっていう仕事だったんですけど、みなさん、態度が悪いんですね。
斜に構えて「やぁ、僕らね、大した金額貰ってないんですよ。」って言ったもんですから、「咲かせてから少ないと言いなさい!」と返したの。そしたら「これだけの面積なのに、1年で(お金が)これだけですよ?」って開き直ったので、「咲かせてから文句言え!」って。「咲かせてなかったら、何も仕事をしていないのと同じだ!」って、檄を飛ばしたんです。(笑)
立田:
本当にカッコいい。
塚本:
そしたら火が付いたらしくて、「いずれ1000万以上私が役所から予算を取ってあげるから、それまで必死にやりなさい。それから、私が全部教えるから。」って言って。それで、すぐに花が咲くようになりましたよ。今は1000万以上貰っています、彼らは。このヤロウって思ったそうですね、女の私に言われて…まぁ火が付いたんです。(笑)
立田:
結果的に、関わっている方、皆さんを幸せにしてるじゃないですか?塚本さんの一言だとかで…。
塚本:
やはりね、信念と情熱を持っていないと。「私はこうやるんです!」っていう信念と、強い、熱い情熱もないと周りは動かない。それだけ。私にあるのは情熱だけでしょうかね。(笑)
立田:
いやいやいや!でも、それに勝るものは無いって事ですよね。
塚本:
皆さんのおかげです。特にはままつフラワーパークは本当に皆さんのおかげ。私はちょっと陣頭指揮しただけ。
立田:
そういう意味では、足利も愛知県もフラワーパークも…相当大変だったと思います。心は折れなかったですか?
塚本:
目的、「成すべきこと」っていう。これをここへ運ぶ、命のまま運ぶ。「じゃあどうすればいいか?」って事だけを考える。周りの雑音は私の場合は入らないですね。信じる目的があるから。その信じるのがズレてちゃいけないんですね、目的もズレてちゃいけない。だから、その為に労を惜しまない。自分の時間の情熱を惜しまないですね。よく皆さんに「女性としては凄い手をしていますね」って言われるんですよ。
記者:
こうやって見ると凄いですね!
立田:
私よりゴツイですね。笑
塚本:
これが白魚の様な指だったら、本当に樹木医?って。机と脳ミソだけの樹木医はあり得ない。自分の手でやるからこうなる。もう昔は傷だらけですよ。ノコギリ、ノミ、トンカチ、ハンマー使って、自分で治療しました。
記者:
初めて見ましたけど、確かに…スゴイ!
塚本:
女の手じゃない。グローブのような…なんて言われてますけど。
立田・記者:
あぁ!びっくり。
塚本:
びっくりですか?(笑)
塚本:
2004年の浜名湖花博の時に、2つのテーマ館をデザインしたの。いっぱいやって、庭を作り変えたりとか。何回も作り変えては、パーティーをやるんですね。それで、着物着て、みなさんとお食事して「塚本さんは、見た目は淑やかですけど、手は凄い。」って。「手は、ある意味表現者だ…何をしている手なのか?」と聞かれると、「樹木医です。ですから、白魚の様な手じゃダメでしょ?」と。ある意味恥ずかしいですけど、でも、この手があるから、色んなことをやらせてもらったんです。
記者:
ノミとかトンカチっていうのは何に使うんですか?
塚本:
木の治療。まぁハサミ、ノコギリは藤の剪定だとか。樹木もありますよね。それで、補強とか。キノコが付くと腐りますから、それらを処理しなきゃいけない。
立田:
キノコを取るためにノミを使ったりするんですか?
塚本:
そういうことも含めて、ノミを使ったりトンカチを使ったり…もう一日中。お昼の時間だけですね、木から降りてくるのは。
立田:
木に登ってやるんですか?
塚本:
かなり登ります。登れない所は高所作業車で。
記者:
そうなんですか!
塚本:
やらない様に見えます?(笑)
記者:
普段のこういう席の塚本さんのイメージが・・・現場を見たことなくて。
塚本:
だから、手は口ほどに物を言う。目もそうですけど、手も口も綺麗な人の樹木医さんは、何をやってるのかしら?って。もう指輪も何も入らない(笑)。だんだん歳を取ってくると節が痛くなるのよね。使いすぎてね、腱鞘炎にもなる。やる時は2カ月~3カ月ぶっ続けとかあるので。
立田:
さすがに今は?
塚本:
今はたまに手入れを、実施をやって見せるっていうのはあります。現場でね。
立田:
フラワーパークだけじゃなくて全国各地?
塚本:
もう全国。
記者:
一番、そういう日々を送られていたのはどれくらい前まで?
塚本:
樹木医になったのは43の時だったので、足利時代が一番やりましたかね、足利は21年半通いました。木の治療っていうのは「真冬」なんです。4月から9月くらいまでは活動期なんです。木の身体のメカニズムはものすごく動いていて、光合成して、自分のエネルギーを蓄積したりして活動していますね。それが落葉期(らくようき)に、葉っぱが落ちて休眠します。その時に、一気に治療する。だから12月から3月、その辺はめちゃくちゃ日本中走りまわります。
立田:
時期があるんですね。
塚本:
活動期だと、枝を切っても樹液がバッと出てきて・・・出血みたいに。
記者:
治療している所を見る機会がなかなか無い。樹木医は木のお医者さんなので、木を診ると中がどうなっていて、どんなオペが必要だ、みたいな事が分かる訳ですね?
塚本:
はい、目視と問診でね。持ち主がいれば「この木って、20年前はこうだったでしょ。その前はこうだったでしょ?」って聞くの。例えば、ある現場へ行ったとき、住宅地だったんですが、ここ30~40年前は田んぼだったでしょ?って聞くと、「はい。」って。「その後、宅地になってその頃から弱り始めたでしょ?」、
「40年くらい前までが田んぼだったとすると、30年前くらいからこの木は弱ったでしょ?」っていうのが分かるんです。
それで、木の傷を見て、この傷はどのくらい前で、今どこまで腐ってるかっていう推測も出来ます。だから、目視と問診で、どういう状態だから何をするかを考える。
例えば、土壌の中が土壌病菌だったりだとか、排水不良とかだと、試し掘りをして「こういう状態ですねー。」っていう診断をしないといけない。診断を間違えたらもう話にならない訳ですよ。樹木医さんもピンキリなので、樹木医がやったのを治しに行くっていう事もある。そういうのは色々ありますね。
立田:
さっきの名言が。手は口ほどに物を言う…HPの対談記事に書かせていただきます!
全員:笑
記者:
本当に、普段の塚本さんは穏やかな方なので、ちょっと本当にビックリした。いやー、ホントに職人さんの手です!
塚本:
そうなんです。だからよく、塚本さんって樹木医もしてて、木も治せる経営者ですねって言われるの。で、「いいえ、私は職人です。職人だからこういう仕事をしたい、フラワーパークをこうしたい!お客様を美しい花と緑で感動させたい。わぁキレイ、わぁスゴイって言わせたいだけなんです。」って返す。フラワーパークを造るという職人、木を治す樹木医、庭をつくる造園家、いっぱい顔を持ってる訳ですよね。だから経営も、今度は逆になった立場で入園料も園づくりもすればいい、っていう事だけなんです。お客様に喜んでもらうっていう観点は、自分がお客様の身になればいい、という事です。
立田:
あの、季節で入園料変えたじゃないですか?アレはちょっとビックリしましたね。凄いなぁこの方、と思って。なかなかやっぱり、こう、常識というか、それが当たり前っていう固定観念をみんな持ってるじゃないですか。
塚本:
だから「1年中800円の入場料がもらえるのか?」ってことですよね。自分が来場者になってみなさい。真夏の暑い時期、花が少ない時に、800円なんか払いたくないわけ。それともう一つ、貧困家庭で、お子さんが小さい時に一度も行けなかったら、公共の施設としてはあり得ない、あってはいけない。だから7月、8月は暑いし、雨も少ないから無料にして、お弁当や水筒を持って来てくだされば、そんなにお金がかからない訳ですから、ご家族の楽しい一つの場面にしてもらえたら嬉しいな、と思って実施してる訳ですね。だから、将来は分かりませんが、私が理事長の間は、「7月、8月は無料で。」って、周りには言い切っています。(笑)
それとやっぱり、草がいっぱい道路に茂ってくると、街の文化レベルが低く評価される。それで、「浜松市で街路樹の勉強会をやりましょう。」って言って、今度、街路樹の勉強会をやる事になりました。日にちも決まりましたので、ぜひ取材に来てください。