もし家を建てるなら
花粉の季節、現代では大多数の人がその不快な症状に悩まされます。今回は、家を建てる際から始めることができる対策や予防策を紹介します。花粉症を出来るだけ遠ざけるための室内空気品質管理、換気、湿度管理など、家づくり計画と併せて考えられる花粉症対策を解説いたします。
1.家づくりの計画段階で採り入れられる花粉症対策
これから家を建てる方にとっては、計画段階から花粉症対策を考慮に入れられることは大きなメリットです。春先の花粉の季節は外出を控えがちになるため、住まいの中で快適に過ごせるようにすることが重要です。具体的には、換気システムの選択や内装材の選び方など、花粉を家の中に入れない工夫が求められます。
1.1. 理想の室内空気品質を実現する
快適で健康的な室内空気品質を実現することが理想的です。そのためには、まず換気計画をしっかりと立てることが大切です。なぜなら、そこで人が生活する以上どんなに花粉症対策をした建物でも外部から室内に空気を取り入れざるを得ず、その空気と一緒に花粉が侵入するからです。そのため、換気設備に高性能なフィルターを導入し、室外から入ってくる花粉を除去して、室内空気をきれいに保つことはとても有効な手段です。もちろん、良好な空気品質を維持するためには、フィルターの定期的なメンテナンスを行うことが必須です。
1.2. 防菌対策を取り入れた内装材
花粉症をきっかけに、菌類やハウスダストなど花粉以外のアレルギーも発症してしまう可能性もあります。これには、内装材の選択で対策を取ることができます。内壁の仕上やフローリングなど、抗菌・抗アレルゲンとなる製品を選ぶことで、室内のアレルゲン増加を抑え、清潔な環境を維持することも、花粉症に伴う他の症状の発症を抑えることができます。さらに、湿気を抑制する機能を持つ材料を利用することで、ダニの繁殖を抑え、アレルギー対策を強化することも有効です。
2. 換気システムのフィルターと花粉症予防の重要性
花粉症対策には、高性能なフィルターを持つ換気設備による給排気を行うことが効果的ですが、どんなフィルターが良いのでしょうか?
2.1. HEPAフィルターの効果
HEPAフィルターは、0.3μm(マイクロメートル=1/10,000m)の粒子に対して99.97%以上という非常に高い粒子捕集率で、空気中の微細な粒子を捕らえることができます。粒径30~40μmのスギやヒノキの花粉はもとより、粒径2.5μm程度のPM2.5の様な極小粒子さえ通さず、室内の空気を浄化しつつ外気を取り入れられるので、室内に不適切な物質を入れず清潔な室内空気環境を保つことができす。
換気システムにこのHEPAフィルターを組み込むことで、花粉が多い季節でも、アレルギー症状を軽減することが期待できます。
この図で、0.3μmよりもさらに小さなウィルスの侵入については、HEPAフィルター自体が何層も重ねられた重層構造であることと、フィルターの化学繊維自体が持つ電荷によってウィルスが吸着されるので、ほとんど心配は要りません。
2.2. 定期的なメンテナンスで空気の清潔さを保つ
換気設備を正常に機能させるためには、定期的なメンテナンスが必須です。フィルターは時間と共に汚れが蓄積していきますから、定期的に交換もしくは清掃を行わなければなりません。
フィルターの交換時期はその建物が立つ場所の環境によって様々です。住み始めの頃から一定期間ごとにフィルターの汚れを確認し、その建物の最適な交換時期を把握する様にしましょう。
3. 室内の湿度管理で花粉の影響を軽減
室内の湿度を管理することで、花粉による影響を軽減することが可能です。湿度が適正であれば、室内に舞い込む花粉が空中に漂うリスクを軽減し、身体の免疫機能も正常に働きやすくなり、家族の健康を守るのに役立ちます。
3.1.水分による花粉症の緩和
室内でも花粉症の症状が出るのは、花粉が浮遊している室内の空気を呼吸するためです。もし室内にある程度の湿度があれば、その水分に花粉が吸着されて床に落下するので空気中の花粉の量が減り、症状を和らげる効果を期待できます。また、のどや鼻などには侵入してきた異物をキャッチすると繊毛(線毛)が働き、粘液と共に異物を押し出すバリア機能がありますが、これには一定の湿度によって粘膜に適切な粘性を保つ必要があります。
この様に、花粉症の緩和には室内に一定の湿度があることが効果的です。
3.2. 適正な室内湿度の目安と管理
室内の湿度が適正であるかどうかは、快適な生活空間を保つ上で欠かせない要素です。一般的に、健康で快適な室内環境を保つための湿度は、35%〜65%とされています。この湿度範囲を保つことで、花粉が室内にとどまりにくくなり、呼吸器系の不快な症状を和らげます。
湿度は、湿度計で定期的にチェックして管理するのが理想的です。しかし、花粉症のシーズン中ずっとチェックするのも大変です。そこで、この管理の手間を軽減するひとつのアイデアを次に述べます。
3.3.漆喰や無垢フローリング材による花粉症対策
花粉症のシーズンが始まる2月頃はまだ湿気が少なく、加湿器などによる室内への水分補給が有効です。しかし、湿度の過不足を管理するのが煩わしくなります。そこで、家づくりをこれから始めるのであれば、室内の仕上に漆喰(しっくい)や無垢フローリング材などの調湿効果のある自然素材を使用することで、湿度をコントロールしやすくするのもひとつの手です。
シーズン終盤の6月に入ると急激に湿度が高くなり、今度は除湿が必要になります。この場合でも、天井や内壁に漆喰、床には無垢フローリング材を用いている建物では、エアコンの除湿機能を頼らずとも適切な湿度を保ちやすくなるので、やはり湿度管理の煩わしさから解放されます。
また、花粉症シーズンは、洗濯物を干すのにも花粉の付着を防ぐために室内でという方も多くなりますが、室内干しによって蒸発する水分でカビやウィルスが繁殖したり、衣類の臭いなどが気になったりします。これらについても、調湿効果に加え特に漆喰の強アルカリ性は空気を清浄に保つことから、その様な問題の対策にも役立ちます。
3.4. 湿度とハウスダストの関連性
室内の湿度はハウスダストとも密接な関係があります。ハウスダストの主要な成分のひとつであるダニは、湿度が高い環境を好むため、湿度管理を徹底することでダニの繁殖を抑制できます。ダニのフンや死骸はアレルゲンの源となっており、ハウスダストを減らすことは花粉症だけでなく、過敏症などアレルギーの予防にも繋がります。
一方、湿度が低すぎるとハウスダストが舞いやすくなり、空気中に長時間とどまることで呼吸の際に体内に取り込む量が増え、アレルギーのリスクを高めます。したがって、湿度の適正な管理はハウスダストの量を減らし、花粉の季節における室内環境質を向上させるために非常に重要です。湿度とハウスダストの関連を理解し、適切な対策を取ることでアレルギー反応のリスクを低減しましょう。
ハウスダスト発生の仕組みについては、コチラの記事をご覧ください。
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