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駐車場計画と敷地の関係

住宅建築での駐車場計画は、車の世帯所有率が約78%にもなる現代では欠かすことのできない計画のひとつです。

駐車場計画は、敷地と前面道路の広さ(幅員)が、ストレス無く車を出し入れできるかどうかに深く関わります。安易なイメージのまま進めてしまい、車の出し入れに毎回気を遣う、買い替えたい車のサイズが合わない、などの不便を住み始めてから知ったのでは大変です。

今回は、適切な駐車場を計画できる様、実際の車の軌跡を見ながら注意すべきポイントについてお話しして行きます。

駐車場計画と敷地の関係

 

前面道路の広さ(幅員)がカギ

駐車場からの車の出し入れは、前面道路の広さ(幅員)に影響を受けます

 

所有している土地の場合

前面道路の幅員に合う楽な車の出し入れができる駐車スペースを確保した上で、建物の位置や玄関の位置を計画するという手順になります。

 

これから土地を購入する場合

駐車する車のサイズと車の側面とのスペースによって、必要な前面道路の幅員が分かるので、土地選びの際の判断に役立ちます

 

例えば、敷地の間口が短く駐車場の幅が限られる場合でも、前面道路の幅員が広ければ意外と車の出し入れがしやすいこともあれば、その逆も然りです。

この様に、駐車場計画は敷地が接する前面道路の広さ(幅員)がカギとなります。

車の側面にスペースの余裕が取れない場合

まず、狭小地に限らず、建物の配置や玄関の位置を優先するなどで車の側面に十分なスペースが取れない場合を見てみます。

今回は、ちょい乗りに便利なコンパクトカーと家族でのお出掛けでも快適なミニバンを想定し、日産のマーチとエルグランドで比較してみます。

 

各車のサイズは、以下の通りです。

【マーチ】全長:3,780mm、全幅:1,665mm、最少回転半径:4.5m

【エルグランド】全長:4,945mm、全幅:1,850mm、最少回転半径:5.3m

 

最初は、マーチです。(以下、全ての図の数値は有効寸法です。)

図①の通り、車と隣地とのスペースを50㎝と助手席側の乗り降りができないほど隣地に寄せた場合です。

最小回転半径4.5mのマーチを隣地に乗り入れずに出入りさせるには、前面道路の幅員は4.6mほど必要なことが分かります。車両先端から向こう側の道路境界までのスペースを図の様な50㎝よりも小さく回せる運転技術があれば、もう少し幅員が狭くても良いかも知れませんが、せいぜい10~20㎝程度なのであくまで目安としてご理解ください。また、敷地の余裕のある方(図の敷地内の右側)へ一旦車の頭を振って出入りすることもあり得ますが、人の負担が増す方法なのでこれも考慮しないことにします。

 

では、車の側面のスペースに余裕を持たせられる場合の前面道路の幅員はどうでしょうか?

車の側面にどれくらいのスペースを持たせるか?

車の乗り降りには60~90㎝ほどのスペースが必要ですが、今回は「買い物袋を持ちながら余裕で乗り降りできる。」ことを想定し、車の側面スペースは、余裕の1mとしました。

その場合は図②の通り、前面道路の幅員は約3.75mと、図①よりも85㎝ほど小さくできることが分かりますね。ただし、隣地境界側の緑色の車では、前面道路と隣地と建築地が接する箇所のギリギリを通っての出入りとなるので、例えば、まだ車の乗り降りができるサイズだからと言って70㎝などのサイズには縮められないことには注意が必要です。また、同じサイズの車を並列駐車し車両間距離を1mとした場合、敷地側寄りの水色の車は、かなり余裕で出入りできることが分かります。「車両間スペース1mの半分ずつ(50㎝)が各車両のための駐車スペース」と見做せば、実際は水色の車は緑色の車の駐車スペースに数十センチ乗り入れながら出入りしているのですが、その乗り入れ部分も自分の所有地なので何も問題は無い、という訳ですね。

 

ここまで、前面道路と車の側面スペースとの関係についてご理解いただけましたでしょうか?

 

さて、もう少し大きなサイズの車ではどうでしょうか?

最少回転半径が影響する

比較車種はミニバンのエルグランドです。

エルグランドの最小回転半径は5.3m。マーチと比べて全長が1m以上、最小回転半径は80㎝も大きなサイズですが、図の通り隣地境界と車とのスペースはマーチと同じ50㎝でも大丈夫そうです。しかし、この回転半径の差分を吸収するために前面道路の幅員が約5.3mとマーチの時よりも約70㎝広い道路が必要となります。

当然と言えば当然ですが、隣地境界とのスペースが同じならボディサイズよりも最少回転半径の差分に応じて道路の幅員に影響するので、車の最少回転半径を知れば必要な前面道路の幅員を推測できるという訳ですね。(もちろん、極端に車幅が広かったりする車種は、その分の考慮が必要です。)

 

では、並列駐車した場合です。

意外に必要な側面スペース

マーチの場合は、人の乗り降りのしやすさからみた側面スペースとして1mとした場合のシミュレーションでした。

図の通り、こちらも最少回転半径に影響されています。側面スペースに必要なサイズは、先のマーチ(図①)とエルグランド(図②)で比較した時の前面道路の広さの差と同様の70㎝を加算した1.7mとなっています。マーチの時と同じく、隣地境界側の緑色の車の出入りは、やはり前面道路と隣地と建築地が接する境界ギリギリを通り、建築地寄り側の水色の車もマーチの時と同様、緑色の駐車スペースに乗り入れながらも余裕で出入りしています。道路幅員は、どちらも駐車位置に関わらず約4.15m必要ですが、図③と比較して1m以上も狭い幅員で済んでいます。

駐車場計画から見た敷地の条件

では、マーチとエルグランドの各車をスムーズに出し入れできる土地を購入して住宅を建築したいと考えている方が、購入すべき敷地の条件を考える当たって、必要な前面道路の幅員と敷地の間口を駐車場計画から判断してみます。

 

前面道路は対面通行とし、日常生活では敷地から前面道路に向かって左側に出ることが多いものとします。また、最低でも60㎝必要と言われている人の車の乗り降りに必要なドア開閉スペースは、よりスムーズな車への乗り降りと車の出し入れができる様、以下の条件を設定しました。

【駐車場の条件】

①隣地境界側の車の助手席側のスペースを80㎝(最低スペース+20㎝)とする。

②並列駐車する車同士の間のスペースも80㎝とする。

③隣地境界側の車の出し入れの際、隣地境界とのスペースを約30㎝確保する。

④車の出し入れの際の前面道路反対側の境界線と車との間を、最低50㎝確保する。

⑤並列駐車した車の建築地寄り側の車(図⑤の水色の車)の出し入れは、もう一方の車の駐車スペースに乗り入れても良い。

この様な条件を満たした計画が、この図⑤です。

図の①、③で見た通り、隣地境界に寄せた車は最少回転半径が小さい方が前面道路の幅員が小さく済みむので、ここではマーチ(緑色の車)が当てはまりますね。また、その隣に駐車することになるエルグランドは、車両の間の最低確保寸法をそこそこ乗り降りしやすいレベルの80㎝としても、余裕で出入りできることが分かります。エルグランドがマーチの駐車スペースに少し乗り入れる(図のオレンジ色の部分)ことになりますが、図の通り車同士の接触の心配が要らないほどのスペースが空いているので問題ありません。

ここで、マーチ用の駐車場の幅は、【A】=2.865m(0.8m+1.665m+0.4m)となります。ただし、並列駐車するエルグランドとの間のサイズは、エルグランド側の40㎝分と合わせ計80㎝とし、お互いの車の乗り降り用に共有することが条件です。また、エルグランドの駐車に必要な巾は、この共有部分の半分に車幅に加え、さらに運転手側の乗り降りのためのスペースが必要ですが、ここは、建物の玄関までのアプローチなどと兼ねることも可能なので、実際にどんな建築計画にするのかを考慮しながらサイズを決めると良いでしょう。

 

この様に駐車計画を考えると、前面道路の幅員は4.2m以上は必要であること、2台分の駐車スペースとして最低5,115m(0.8m+1.665m+0.4m+0.4m+1.85m)に運転手側の乗り降りスペース(最低でも60㎝以上)が必要であることが分かります。運転手側の乗降スペースを玄関までのアプローチと兼ねる場合、ソファや冷蔵庫など大型の荷物の搬入のために1.2mは欲しいと考えれば、敷地の間口は6.315mが必要です。ただし、これは有効寸法なので、両隣の隣地境界に立てるフェンスや塀などの厚みを考えると、ざっと6.5m以上の間口の土地を探せば良いという判断になるでしょう。

 

#駐車場計画 #敷地 #前面道路 #最少回転半径

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