もし家を建てるなら
住宅の内観デザインも外観に劣らず豊富な種類があります。現代では、畳部屋が和風で板の間は洋風という昔ながらの単純な区別はなくなり、内観デザインは外観よりもその境界線が曖昧なスタイルが増え多種多様です。
そんな多様化しつつある内観デザインですが、今回は、自分の好みの内観デザインを見つけるためにお役立ていただけそうな定番スタイル7選と、最近海外から人気が出始め、国内でも耳にする様になったジャパンディについて、ご紹介いたします。
1.カフェスタイル
ここ10年くらいの間で人気が出始め、今や定番のスタイルです。
世界的に有名なカフェの影響か、好きな飲み物と一緒にくつろげる様な生活スタイルを望む人が多くなった様に思います。
白の塗り壁と対照的なダークブラウンで着色した化粧梁、窓際に配置した梁と同系色の造作カウンターが、一杯を楽しみながらくつろいで過ごすカフェの様なひとときを味わわせてくれます。
無垢材や漆喰などの自然素材による内装に、オープンスタイルで見通しの良いキッチン。ダーク系の照明器具といくつかの小物による装飾。また、自然素材に合うテーブルなどの家具が、生活感を感じさせないオシャレなカフェ空間を演出します。
2.インダストリアル
一見、カフェスタイルと似ていますが、レンガやコンクリート、アイアン(鉄)といったハードなマテリアルで工業(インダストリアル)的な雰囲気を強調した内装が特徴です。
むき出しの木材や無垢フローリング、塗り壁など自然素材との相性も良いインダストリアルデザイン。
集合住宅など鉄筋コンクリート(RC)造のリノベーションでは、躯体表しとすることで無骨なコンクリートの表面が露わになり、よりハードなインダストリアル感を出すことができます。
ソファなどは、よりハード感を強調するのであれば革製がお勧めですが、ファブリック(布)でも色とデザインが合えば、違和感のない柔らかさを演出できます。
また、照明器具はブラックかシルバーであることが多いですが、シェード(笠)が金属製であれば、他の色でも個性的な演出になります。
3.北欧
同じヨーロッパ地域のデザインでも、可愛さが人気の南欧(プロヴァンス)とは趣が異なるのが北欧デザイン。
日照時間が短く家の中で過ごす時間が長くなる冬を少しでも明るく楽しく過ごしたいという気持ちが、家具や小物の原色とは違った薄明るい色を好んだり、照明や家具などの楽しげで機能的なデザインを生み、これらを建物の自然素材と見事に融合させています。
漆喰や無垢材、薪ストーブでまったり感のある空間に置いたまっ白なキッチンが、心を軽やかにしてくれます。
無垢フローリングに漆喰塗り壁の標準的な自然素材仕上げの空間に、ライトグリーンのファブリックソファとアースブルーのラグで北欧インテリアを演出。
本来の北欧インテリアは、楽しげであたたかみを感じられるデザインですが、北欧ほど冬が厳しくない(一部を除いた)日本では、器具を目立たないダウンライトや透明感のある照明器具にすることで、空間をちょっぴりクールに引き締めるなどのアレンジも多用されています。
4.アンティーク
こちらも自然素材との相性が抜群のデザインスタイル。
建物の構造材や天井、壁、床など内装によってアンティークデザインにすることができ、家具やカーペットなどの調度品でさらに個性を演出できます。
オーソドックスな壁付けのキッチンとデコラティブな収納扉のデザイン、重厚感のある年代物のダイニングテーブルと椅子、格子入りの上げ下げ窓、ダークブラウン色の無垢フローリングと化粧梁。そして、まっ白な塗り壁は、まさにアンティークの定番。
塗り壁をベージュ系にしたアンティークスタイル。木質系素材に着色した深い色、年代を感じさせる様なデザインのレンガタイル、エイジング加工(※)を施した化粧梁や柱で実際以上の歴史観を演出しています。
※エイジング加工:本来、経年によって付くキズや色の変化などを人為的な加工で施すこと。
5.モダン
ここまでのデザインスタイルと大きく打って変わるのがモダンデザインスタイル。
その名の通り、「現代的」なデザイン志向からは、都会的、おしゃれといった言葉が似合いそうな素材や色、形が特徴です。
合板フローリングや洗練されたデザインの設備機器など、工業化製品を前向きに取り入れるモダンスタイルは、オシャレでカッコ良く便利なのが特徴。デザインの尖った照明器具でも似合います。
モダンスタイルは、色や素材のトーンを少し落ち着かせることでシックなイメージを演出することもできます。
6.ミッドセンチュリー
文字通り世紀の中間という意味で、20世紀の中間、つまり1940~1960年頃を指し、機能性や合理性が重視され、プラスチックや合板などの加工技術が進み、曲線的なデザインの家具が量産され始めた時代です。
現代から見ればレトロで、当時はモダンだったデザインの再現スタイルです。
ダークブラウンの無垢フローリングや差し色として一部を緑色にした壁。当時を偲ばせるデザインのタイルがミッドセンチュリー感を醸し出しています。落ち着いたトーンで包まれた空間の壁の一部の緑色が差し色としてアクセントになります。
ミッドセンチュリー時代の家具は、加工技術の進歩から曲線的なデザインが可能となり、プラスチック製の機能的なデザインのイスなどが量産されました。家具も全般的に丸みを帯びたデザインがミッドセンチュリーの特徴です。
7.和風
現代の日本では、インテリアのメインスタイルとしては採用率が低い和風スタイル。
今や、定番と言って良いのか迷うほどですが、純ジャパのデザインとして「定番スタイル」の最後に取り上げました。
都市圏の新築ではほぼ見なくなった、純和風スタイル。
畳同士の部屋を襖(ふすま)で仕切り、隣り合う板の間の廊下とは畳部屋への採光のために障子で仕切ります。また、内壁の仕上はしっくい塗りが標準で3尺(約91㎝)または1間(約182㎝)ごとに化粧柱が見えます。
襖の取り外しで、用途に応じた部屋数と広さを調整できるフレキシビリティの高さが特徴です。
床の間や書院の様な純和風の空間は設けず、洋室の一室を畳敷きと障子に変えるだけの現代和風は、建物の外観が洋風でも馴染みの良いデザインスタイルとなります。
番外:ジャパンディ
数年前から欧米で流行り出したと言われる、和風と北欧風のイイとこ取りのミックスデザインスタイル。ジャパンディは和風の英語Japan(ジャパン)と北欧の英語Scandinavian(スカンジナビアン)を掛け合わせて作った造語です。
欧米の人々から見た日本と北欧のインテリアには相通じる要素があり、それらを上手く融合させたデザインとして欧米発の和風チックな北欧風インテリアスタイル「ジャパンディ」が、日本でも認知度を上げて来ている様です。
温かみと機能性に優れた北欧スタイルのインテリアをベースに、和の詫び寂びの無常観をエッセンスとして採り入れるジャパンディ。
シンプル、ミニマル、天然素材といったアースコンシャスな生活スタイルと親和性の高い言葉を手掛かりに、素材や色、家具を選ぶのがコツ。
定番7選と番外編でお送りしたインテリアのデザインスタイルは、いかがでしたか?少しでもお好みのスタイルを見つけていただければ、嬉しいです。
インテリアデザインは、外観デザインよりも更にそのスタイルの境界線が曖昧で、特にカフェ、インダストリアル、北欧、アンティークの各スタイルは、自然素材との相性の良さからそれぞれ明確に区別できないこともあり、4つの内のいくつかのスタイルに所属すると言える様な場合も多々あります。また、そこにジャパンディの様な一層曖昧さを増したスタイルが加わると、もはやスタイルを区別する意味がないとさえ感じることもあります。しかし、インテリアデザインは、建物の外観よりも遥かに目に付く要素。最終的には、オリジナルなインテリアに仕上がることになったとしても、そのきっかけとして、今回ご紹介したスタイルのいずれかをベースに考えてきたのであれば、きっと満足の行く自分だけのインテリアデザインになると思います。
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