もし家を建てるなら
「アイジーさんの建物は、耐震等級3ですか?」
住宅建築をお考えの方から聞かれることも少なく無いこのご質問。
戸建の建築では圧倒的な人気の木造住宅ですが、地震大国のわが国だからこそ木造の耐震性はとても気になるところですね。
事実、木造戸建住宅の建築会社で耐震性をしっかりと考えるところは、耐震等級2あるいは耐震等級3を必須としており、一般の方々にも耐震等級の重要性が浸透してきている様です。
今回は、耐震等級3とは何なのか、どれくらいの震度に耐えられるのか、注意点はどこか、お勧めの耐震等級と算定方法についてご説明していきます。
(本記事は、2022年10月2日の内容を改訂し、再公開したものです。)
1.耐震等級3とは
地震に対する建物の強度を示す等級で、耐震等級3を最高等級とし、以下に等級2と1が続きます。
耐震等級2は等級1の1.25倍、耐震等級3は等級1の1.5倍の建物強度であることを示します。
2.震度いくつまで耐えられる?
耐震等級1では、震度5強程度ではほとんど損壊せず、震度6強でも即崩壊や倒壊はしない耐震性があるということになっています。また、耐震等級は、その1.25倍の強度があることになっていますが、いくつまでの震度に耐えるという記述がほとんど見られません。更に耐震等級3は、等級1の1.5倍の強度ですから相当な震度に耐えそうですが、残念ながらこれもしっかりとした記載は無い様です。
しかしながら、机上の強度よりも実際の地震にどれだけ耐えたのかについては、具体的な事例があり、こちらの方がより現実味のある内容だと思います。
構造計算(許容応力度計算)による耐震等級3を取得した住宅の事例ですが、2016年に震度6強の揺れが連続発生した熊本地震にも耐えた事実があります。
このことから、耐震等級3であれば、これまでに観測された国内の最大震度でも耐えられそうです。ただし、この等級3の根拠が構造計算(許容応力度計算)によるものであることが重要です。
3.耐震等級の基準
等級1を最低基準とし、震度6強程度までの地震では倒壊や崩壊をせず、震度5程度の地震では損傷もしない程度の建物強度であることを目安とし、2000年に制定されました。
この目安をクリアするのが、戸建住宅を建築する際に関わる国の法律である「建築基準法」を遵守しているということなので、まっとうに建てた建物であれば、所定の申請さえすれば耐震等級は1を取得できます。
そして、この等級1に求められる耐震強度の1.25倍の耐震性がある建物が耐震等級2となります。建築基準法とは別に定められた法律「住宅品質確保促進法」(通称:品確法)に規定された計算方法を適用します。
最後の耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の強度を基準とし、品確法による計算か許容応力度計算という構造計算によって強度を確かめます。
4.建築基準法、品確法、構造計算による算定とは
建築基準法による耐震強度の算定はとても簡易です。四則演算さえできれば誰でも算出できる計算式と、簡単な算定方法で壁の配置の適否を判断します。ご興味がおありの方は、コチラのサイトに詳しい解説があります。
品確法による算定は、建築基準法によるものより遥かに面倒ですが、計算自体は一定の規則と手順に従うだけなので、次に述べる構造計算と比べるとやはり強度算定の根拠はそれほど精密とは言えません。
最後の構造計算による算定ですが、これは、ビルなど大規模建築物の耐震設計の必須条件です。地震の際、屋根から建物の下に向かって順番に、柱や梁など全構造材に掛かる圧縮や引張など力の流れ方を見ながら、全接合部についてコンピューターで計算します。住宅の様な小規模な建物でも同じ手順です。
5.多様な計算方法と強度判定のリスク
耐震等級1~3の強度を確かめるのに、建築基準法や品確法、そして構造計算という方法を用いますが、これらにはその耐震性を確かめる計算がいくつか存在しています。
5.1.多様な計算方法
(1)耐震等級1の場合
①建築基準法に定める「壁量計算」と「壁の配置」
②建築基準法に定める「N値計算」
(2)耐震等級2、3の場合
①品確法に定める「壁量計算」と「壁の配置」
②品確法に定める「N値計算」
③品確法に定める「床倍率」
④品確法に定める「横架材の断面算定」
※これらの計算の他、基礎仕様の選定も必要です。
また、品確法とは別に、⑤許容応力度計算(構造計算)も選択可。
5.2.強度判定のリスク
上記で、耐震等級2以上では、品確法による確認と構造計算による確認の2種類があると分かりました。ところが、ここにあまり知られていない注意点があります。それは、耐震強度が低い耐震等級3の存在です。
それは、先の計算方法の適用によって同じ建物強度でも適用される等級が異なってしまう場合があるということです。
この表でお分かりの通り、②の品確法で算定された強度ランク1.9~2.0は、最高の耐震性となる耐震等級3と判定されますが、③の構造計算で算定された強度ランク2.0~2.2(つまり、先の強度ランクよりも高い強度)の場合、耐震等級は2と判定されています。つまり、高い強度を証明する構造計算による建物より、それを下回る強度の品確法による建物の方が高い耐震等級を得ることができる仕組みとなっているのです。これは、等級判定に用いる手法(品確法か構造計算)毎に判定基準が定められてしまっており、品確法による算定と構造計算による算定は、それぞれ全く別の手法なので、強度の整合性を考慮していないことによるものと思われます。
6.お勧めの耐震等級と算定方法
では、大切なわが家の耐震性を確保するのに、いくつの耐震等級をどの算定方法によって強度を確保すべきでしょうか。
それは、2016年の熊本地震での実態を根拠にすると良いと考えます。先に述べた通り、この地震では、わずか3日の間に震度6強の揺れが2回起きたにも関わらず、耐震等級3の建物は一部軽微な損傷を除き、ほぼ無被害でした。
つまり、わが国での地震は、震度6強の揺れが連続して起こったという事実があり、それに耐えるための建物は耐震等級3であることが大前提と考えます。そして、その裏付けとなる算定方法には、精密な計算による「構造計算」を採用します。構造計算の場合、耐震等級3を得るには建物強度が2.4~2.7である必要がありますが、これよりも低い建物強度1.9~2.0で耐震等級3となってしまう品確法による算定よりは、圧倒的に安心できますよね。
もちろん、構造計算には20万円程度の費用が必要ですが、品確法による算定でもそれなりの費用が必要ですし、その出費によって震度6強の地震が連続発生してもほぼ無被害でいられる可能性が高められ、被災後の出費がほとんど無くて済むのであれば、これほど安心できる選択はないと思います。
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