もし家を建てるなら
近年、高性能住宅への関心の高まりと共に、遮熱や断熱という住宅の温熱環境に関わるテーマへの関心も高まっています。
温熱環境には、建物の室内外の熱の出入りに関して、遮熱と断熱という2つの熱対策が重要な役割を果たします。
「遮熱」は、屋外から室内への熱の侵入対策に重要で、「断熱」は、室内から屋外への熱の損失対策に重要な考えです。
今回は、遮熱と断熱の違いについて、熱の移動の違いを理解していただきながらご説明します。
1.遮熱とは
住宅における遮熱とは、屋外から室内への熱の侵入を遮ることです。熱を遮るというのは、熱の3つの移動方法の内「放射」による熱への対策ということです。
住宅に関わる放射熱は、太陽光そのものです。この太陽光を遮ることが住宅における遮熱です。具体的には、窓を少なくしたり小さくしたりすることや、窓の外側にシャッターや庇などを設けるなどです。
遮熱は、放射以外の熱の移動手段である「対流」と「伝導」による熱への対策にはなりません。
2.断熱とは
住宅における断熱とは、室内から屋外へ流出する熱を断つことです。熱の3つの移動方法の内「伝導」による熱への対策です。具体的には、熱が伝わりにくい素材を屋根や外壁の断熱材として使うことです。
後で述べますが、断熱は遮熱よりも優先すべき対策事項です。
3.熱の移動方法
上記で、「熱の3つの移動方法」と書きましたが、これについて簡単に解説します。
熱の移動方法には、放射、伝導、対流という3つがあります。放射は、例えば太陽や焚火など直接触れていなくても感じられる熱のことで、伝導は、直接手などが触れたものから感じる温度です。熱したフライパンの持ち手に感じる熱や口に含んだ氷の冷たさは伝導熱によるものです。そして、温度をもつ空気の移動による熱移動が対流となり、エアコンの冷暖房風は、対流による熱のコントロールということです。
住宅で言えば、夏の熱対策は、太陽光による熱の室内への侵入を防ぐことが重要で、主に窓からの侵入に対する遮熱が必要です。
夏の建物への熱の侵入経路と割合(YKK AP様 HPより)
冬の熱対策は、室内から屋外への熱の流出を防ぐことが重要で、主に屋根、外壁、床下(または基礎)への断熱が必要です。
冬の建物からの熱の流出経路と割合(YKK AP様 HPより)
4.対流熱への対策は?
室内の温熱環境対策という点では、対流による熱対策に「気密」という考え方もあります。しかし、建物への熱対策としては、断熱性と遮熱性が室内の温熱環境の良し悪しに最も大きな影響を及ぼし、それに比べ気密性の影響はそこまで大きくはありません。従って、熱対策としては遮熱と断熱が最重要で更に断熱性の優先度が高いと理解することが大切です。
ただし、気密性は高気密高断熱住宅の重要事項です。実際の住宅づくりでは、気密性についてもしっかりと検討しましょう。
5.木造住宅の熱対策
では、建物の熱対策の基本的な考え方をお話しします。
最も重要な断熱性に関しては、建物の外周部(主に屋根、外壁)に熱の伝導性の低い材料を使うということです。同じ伝導性であれば厚みが増すほど断熱性が高くなりますが、現実的な厚みに見合った熱の伝導性の材料を選択することが重要です。またそれは、外壁や屋根の仕上材ではなくその内側に断熱のために設置する「断熱材」を指します。
断熱材については、以前の記事でお話ししています。
次に重要な遮熱性ですが、太陽光などの放射光を素通りさせてしまうガラスの様な透明な部材の使用を控え、窓の様な開口部には、直射日光の室内への侵入を避ける日除けなどを設置することです。日除けなどは、放射光がラジオなどと同じ電磁波の一種なので、透明なもの以外の物質に当たると物質に吸収されて熱に変換される性質を利用したものです。放射光が庇に当たり熱に変換されても外部に面した部位のため、室内への熱の侵入を防ぐことができます。ということは、外壁に当たった太陽放射は外壁内で電磁波から熱に変わるので、外壁の断熱性能が高ければ室内への熱の侵入を抑えることができるということになります。これは、断熱性は遮熱性よりも優先する理由の一つです。
遮熱に関わる対策として、以前の記事で窓に用いるLow-Eガラスについてお話ししています。
6.まじめに建てる高気密高断熱住宅
近年の高性能住宅への関心の高まりから、根拠不明な遮熱性能や間違えた断熱性能の考え方で自社建築の性能を語る建築会社が散見される様になってしまっています。建物の温熱環境は、室内の快適性や住まい手の健康、そして建物の長寿命化にも関わる重要事項です。それであれば、正確な知識と経験に基づいた家づくりを提供すべきと当社は考えています。熱対策を考える上での基本的な知識はシンプルです。その基本知識を抑えずに材料や工法の特別さを強調した差別化に走る様な家づくりが正しいとは思えません。
きちんとまじめに高気密高断熱住宅を建てたいとお考えであれば、ぜひ一度当社にご相談ください。
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