もし家を建てるなら
今回は木造住宅の一般的な断熱工法である充填断熱工法の種類と特徴をご説明します。
建物の断熱性能の良し悪しは、選んだ断熱材の性能が活かせるかどうかです。そして、それは建築現場での施工品質に掛かっています。その為、選んだ断熱材の性能を最大限に引き出せる断熱工法の選択は大変重要です。
断熱工法は、大きく次の様に分けられます。
①外壁の空間に設置する「充填断熱工法」
②外壁の構造材(柱など)の外側表面に材料を貼る「外張断熱工法」
(※①を内断熱工法、②を外断熱工法とも呼びます。)
また、これらを組み合わせて採用することも可能です。断熱材の考え方と同じで、どれが一番優れていると言うことはありません。それぞれの特徴を良く理解した上で我が家の施工方法に採用すべきものです。
今回は、まず木造住宅で一般的な工法である①の充填断熱についてご説明します。
1.充填断熱工法とは
下図オレンジ色の線の部分に断熱材を充填する工法で、内断熱工法とも呼ばれます。
日本の一般的な木造住宅工法である在来工法の建物で、最も採用されています。
断熱材を天井裏(または屋根裏)、外壁内部、床下に設置します。(オレンジ色の線)
※屋根裏と天井裏の断熱範囲が半分ずつに示されていますが、実際には屋根全面か天井裏全面、または屋根裏と天井裏の両方の全面を断熱します。
使われる断熱材は、天井裏、外壁内については繊維系フェルト状の製品が一般的です。
最近では、外壁内は発泡プラスチック系を使う建築会社も増えています。
床下は繊維系のボード状製品か発泡プラスチック系が一般的です。
繊維系バラ状断熱材は手間の掛かる吹込み施工の為、使用頻度が最も少ないものです。
しかし、屋根裏、天井、外壁内、床下いずれにも施工されます。
2.充填断熱工事の事例
各部位は以下の様な状態になります。
天井 繊維系フェルト状製品(マグ・イゾベール社HPより)
(部屋内から天井を見上げた様子)
長尺のフェルト状の製品を1列ずつ敷きます。
天井 繊維系バラ状製品(日本セルローズファイバー工業会HPより)
断熱材をブロアーで圧送し、吹き積もらせます。
アイジースタイルハウスでは、この繊維系バラ上製品であるセルロースファイバーを標準仕様としています。
天井 発泡プラスチック系 現場吹付けタイプ(アイシネンHPより)
天井裏ではなく屋根の裏側に吹付けます。
外壁内 繊維系フェルト状製品(硝子繊維協会HPより)
防湿フィルムの縁をタッカーで留めて、断熱材を固定します。
外壁内 発泡プラスチック系ボード製品(EPS断熱建材総合サイトHPより)
固形のボード状で自立させます。
外壁内 繊維系バラ状製品
ブロアーで断熱材を壁内へ圧送施工します。
外壁 発泡プラスチック系 現場吹付けタイプ(アイシネンHPより)
専門業者による施工となります。
床下 繊維系ボード状製品(硝子繊維協会HPより)
繊維系のボード状製品を敷き詰めます。
床下 発泡プラスチック系ボード製品(EPS断熱建材総合サイトHPより)
ボードをはめ込む要領で設置します。
床下 繊維系バラ状製品
天井、壁、床下を同じ要領で吹込み充填します。
床下 発泡プラスチック系 現場吹付けタイプ(アイジーコンサルティングHPより)
専門業者による施工となります。
3.充填断熱工法の特徴(材料の特徴は「断熱材の種類と特徴」をご覧ください。)
3-1.充填断熱工法自体のメリットとデメリット
メリット
・建物の構造上できるスペースに設置する為、断熱工事の為の下準備が不要。
・壁内や天井裏など外部の影響を受けにくい場所にあり、断熱材劣化の心配が少ない。
デメリット
・狭小スペース、複雑な形状のスペースへの設置には注意が必要。
・外断熱工法と比較して、気密工事(気流止め)には一定の技術力が要求される。
また、使用する断熱材の種類によっても施工性が違い、施工精度が断熱性能の鍵となります。
ここでは、種類ごとの特徴をメリット、デメリットに分けて簡潔に述べます。
ただし、材料や工法を知るのは確かに良いことですが、個別に比較することは重要ではありません。最終的には建物全体の断熱性能を知ることがずっと大切です。
3-2.繊維系フェルト状製品(主にグラスウール、ロックウール)の場合
メリット
・施工が容易で専門業者が不要なため、工事費を抑えられる。
・短時間に施工できる。
デメリット
・コンセントボックス周囲、筋交いの壁など手を入れにくい箇所に隙間を生じやすい。
・壁内で垂れ下がらない様、確実なタッカー留めが必要。
3-3.繊維系天然系バラ状製品(主にセルロースファイバー)の場合
メリット
・ブロアーによる圧送充填の為、小さな隙間にも充填できる。
デメリット
・専門業者による施工が必要。
・フェルト状製品の約2倍の手間が掛かる。
3-4.発泡プラスチック系(主にウレタンフォーム)の場合
メリット
・吹付け後発泡する為、狭い空間でも施工できる。
デメリット
・専門業者による施工が必要
・充填不良による隙間が出来ない様、隅角部まで行き渡る様高い施工技術が必要。
4.最後に
断熱工事の材料と工法の特徴を別々に知ると、現場での断熱工事の実態が理解しやすくなります。
今回は工法のご説明で、2種類の内の一方について特徴を述べました。
充填工法が持つメリットとデメリットを、現場ではどう活かし対策しているのか?を気に掛けて頂ける様、施工事例を示しつつ特徴を簡潔に述べました。
この工法だから絶対に大丈夫とか不適切と言うことはありません。
雑多な情報に惑わされず、その建築会社の断熱工事の材料と工法が、どの様に選択され現場で実践されているのかを、ご自身の耳と目で実際に確かめられることをお勧めします。