もし家を建てるなら
我が家の新築計画で、電磁波対策工事をする場合があります。
電磁波については、WHO(世界保険機関)、IARC(国際がん研究機関)、ICNIRP(国際非電離放射防護委員会)の様な中立な国際機関をはじめ、企業や民間組織、市民団体、個人に至るまで様々な報告や見解であふれています。
電磁波には様々な種類がありますが、その全てを有害と言い切るのは早計です。もしそうなら、地球自体が帯びている地磁気や太陽からの熱も危険ということになります。しかし、無害であることが証明されているということも無く、例えば携帯電話の電磁波との関係に疑いの余地がある医学的な症例報告がある事を、WHOなどの公的な機関でも認識しています。
1.電磁波の基礎知識
ここでは電磁界(電磁場)=電磁波として扱います。
1-1.電磁波とは
下図の様に、電気のある空間を「電界」、磁気のある空間を「磁界」と言います。(地球は約460mGの磁界に覆われています。)
電界と磁界を合わせて「電磁界」と言い、その力の強さが電磁波として計測されます。
(電磁界情報センターHPより)
「電界」は電圧がかかっているものの周りに発生し、「磁界」は電気が流れているものの周りに発生します。
(電磁界情報センターHPより)
コンセントにつないでいる機器について
①スイッチがオフでも「電界」は発生しています。
②スイッチがオンの時「電界」と「磁界」が発生します。
イメージとして、電磁界を「海」に例えるなら、電磁波はその海でうねる「波」と考えると分かりやすいと思います。
1-2.電磁波の強さの単位
磁界の強さとは磁束密度(単位面積当りに通っている磁力線の量)を表し、単位は次の通りです。
・単位:テスラ(T) (または、ガウス(G))
(※100マイクロテスラ(μT)=1ガウス(1G)です。)
標準単位はテスラですが、一般的にはガウスの方が認知度が高い様です。
1-3.電磁界の種類と人への作用
電磁界は、次の2種類に分けられます。
1-3-1.非電離放射
送電線や家電製品などから発生する超低周波電磁界、IH調理器などから発生する中間周波電磁界、テレビ放送や携帯電話などの通信に利用される高周波電磁界(電波)などは全て非電離放射線に属しています。
非電離放射線は、電離放射線のような物質に衝突して原子から電子を引き離す能力(電離作用)を持ちません。したがって、ばく露されても細胞内の遺伝子に悪い影響を与えることはありません。
1-3-2.電離放射
エックス線やガンマ線などは極めて高い周波数の電磁波で、細胞を構成する分子の原子結合を破壊することによって電離作用(プラスやマイナスに荷電された原子や分子を生成すること)を起こさせるのに十分な光子エネルギーを持っているので、電離放射線と呼ばれています。
※一般的な電磁波対策において、対象となるのは非電離放射の方です。
電磁界(電磁波)のエネルギーは、波長が長いほど小さくなります。
ちなみに、一般的に危険な電磁波が出ていると思われている送電線は、家庭用コンセントと同じ超低周波電磁界に属するエネルギーの小さな電磁波しか出ておらず、実際の計測値も最大値としては4.43μT(44.3mG)で、ICNIRCのガイドラインや国内の基準値である200μT(2000mG)をはるかに下回っています。
電力設備からの磁界の強さ(環境省HP「電磁界に関する調査研究」HPより)
人への作用
■電離放射の場合
・発癌性があると認められています。
■非電離放射の場合
・低周波(100kHzまで → 一般家電、IHなど)の場合
きわめて強い電波(5万G以上)を浴びることで体内に電流が流れ、“ビリビリ”“チクチク”と感じる刺激作用があります。この周波数帯は、船舶の航行用等の特殊な用途に使用されています。
・高周波(10MHz以上 → TV放送、携帯電話)の場合
きわめて強い電波を浴びると体温が上がります。
※その他の作用(上記の刺激作用や温熱作用以外の、いわゆる電磁波過敏症)の事例としては、総合医療機関、公的機関からの客観的な事例が皆無であること、また、民間企業や個人の見解によるものはあまりに客観性に乏しい為、ここでは記載していません。
2.電磁波についての見解
■世界保健機関(WHO)
「0-300GHzの周波数を網羅する国際的なガイドラインで推奨されている限度値よりも低いばく露は、健康への悪影響を何ら生じない、ということを示しています。但し、「より良い健康リスク評価の前に埋める必要がある知識のギャップが依然としてあります。(※1)」との報告があります。
ざっくり言うと、「調査の限りではまず大丈夫だけど、調査が必要な不確定な部分もあるよ。」と言う感じでしょうか。
■国際がん研究機関(IARC)(※WHOのがん専門研究機関)の分類
「グループ 2B」に分類しており、その意味は下図の通りです。
電磁波の中でも「超低周波磁界」と「無線周波電磁界」の2種類について、「発がん性があるかも知れない」と言う見解です。(10MHz~3000GHzの範囲を高周波電磁界と呼び、無線周波電磁界は10MHz~300GHzの範囲なので、「無線周波電磁界=高周波電磁界」と解釈しても差し支えありません。)
■ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドライン
・50Hz、60Hzの電磁波については、200μT(2000mG)
■総務省の規制値
・ICNIRPのガイドラインに準拠し、同上としている
3.まとめ
電磁波については、人類が初めて無線通信に成功した1895年から健康への影響が科学の関心の対象とされ、膨大な検証と報告があります。(その他の化学物質などと比べ、電磁波ほど長期に渡って膨大な研究、科学的検証が行われてきたものは他にほぼ無いそうです。)
そこから導かれた標準的な見解は、非電離放射線として分類される電磁波による人への影響は
・低周波電磁界できわめて強い電波を浴びた際の刺激作用
・高周波電磁界できわめて強い電波を浴びた際の体温上昇
の2点で、きわめて強い電波(現時点では不明で今後も調査が必要なこと)としては
・超低周波磁界(通電しスイッチをオンにした家電など)における、長期ばく露による健康への影響。
・無線周波電磁界(携帯電話や放送局など)において、携帯電話の累積使用時間が上位10%の人々で、神経膠腫のリスク上昇を示唆するものがあった。(ただし、因果関係があるとは言い切れないレベルの為、現在も調査中)「2.電磁波についての見解」の※1の部分
の2点です。
これまで述べてきた様に、非電離放射という分類の電磁波ではどの周波数帯においても、極めて強い(通常の電気製品や設備からは出ない)電波を除けば、日常生活での短期での影響はまず無いと言う事であり、しかし、長期の電磁波ばく露の中では、一定の条件下で特定の病気の発生リスクが高くなると言う示唆があり、特定の周波数帯についてもっと長期の検証が必要であると言う事です。
つまり、配慮すべきは「①日常生活で長期にばく露する可能性のある電磁波」と「②無線周波(高周波)電磁界の長期ばく露」についての2点です。
①については、建物内(住宅や学校、会社)の電気配線や家電、事務機器に対し、②については、携帯電話等の頭の近くでの使用時間の量に対して配慮すべきと言うことが分かります。
※発生電磁波の実態、諸外国の規制、住宅における電磁波対策については別の機会に改める予定です。