もし家を建てるなら
自己資金以外の住宅取得資金として、強力な助っ人となるのが住宅ローン。実際、住宅取得者の約80%がこの制度を利用しています。
その割に、住宅ローンを借りる為に行われる借入れ審査には細心の注意が必要である事を理解している人は、実はそう多くありません。しかし、この借入れ審査では、あなた個人の信用情報が照会され、その内容によって借入れの認否が確定してしまうのです。
今回は、住宅ローンにおけるこの借入れ審査と信用情報の開示請求についてお話しします。
1.借入れ審査とは
住宅ローンを借りる際、そのローンを提供する金融機関と契約を交わしますが、契約前に借入れの認否を金融機関が判断するための手続きを踏みます。この手続きを借入れ審査といい、一般的には申込本人の名前、住所、勤務先、年収等とおおよその建築計画(土地、建物の概要と概算、建築時期などについてのおおまかな情報)で行う事前審査と、建物の請負工事契約完了後に行う本審査があります。土地を購入する場合の事前審査は、土地の売買契約前でも後でも申し込むことができます。(事前審査は、売買契約となる分譲住宅の購入の場合ではまた違ってきますが、ここでは触れません。)
1.1.事前審査の意味
事前審査が承認された場合、希望する額の借入れはできるだろうとの前提で計画を進めることができます。絶対に借入れができるという保証ではありませんが、現実的に事前審査以降で借入れが認められないケースはあまり無く、事前審査の結果は金融機関によるある程度客観的な判断なので、大きな予算を必要とする住宅取得計画を進める際の重要な指標になります。
もし、年収からみた借入の返済負担率に問題が無いにも関わらず承認されなかった場合は、申込本人か連帯保証人の信用情報に原因がある可能性があります。信用情報とは、個人の一定期間過去までの現金でやり取りした以外のお金に関するほぼ全ての情報で、クレジットカードやキャッシングの契約状況、借入れや返済などの取引状況などです。ここで問題となる状況があれば事前審査の時点で承認されないということになります。
事前審査は通過して当たり前ではなく、ある程度客観的に見てほぼ借入れができると判断した上で住宅取得計画を進められるという安心感を得られる事、また、もし承認されなかった場合は、否認理由が自分の信用情報にあると推測できるので、解決すべき問題が明確になるという事が事前審査を行う意味と言えます。
1.2.本審査では
事前審査の承認を得、建物の請負契約を済ませたらすぐに住宅ローンの本申込みを行ないます。本申込みとは、本審査に申込むことであり、本審査の承認を経てやっと住宅ローンの契約を交わすことができることになります。住宅ローンって、結構面倒なのです。
本審査では、提出する情報が事前審査よりも詳細になっているので、その情報で精査することになります。この時点で、未承認(つまり、借入不可)となるケースはほとんどありませんが、場合によっては、借入金額の減額を承認条件に出される場合があり、これは、借入可能額目一杯の計画は危険だとよく言われる理由の一つです。
この様な借入れ審査をクリアした上でやっと住宅ローンの契約に及ぶ訳ですが、そもそも事前審査が否認されてしまっては、解決すべき問題が分かったところで住宅取得計画は遅らさざるを得なくなり、これはこれで大変大きな問題となります。
2.信用情報を確認した方が良い場合
住宅ローンの借入れでは、2回ある審査の内、最初の事前審査をまずクリアしないことには話が何も始まらないと言うことと、事前審査が否認されてしまっては、人生最大の計画がそもそも大きく狂ってしまうと言うリスクを避けることが大切です。
その為の対策として、本人だけができる(例外はあります)信用情報の開示を請求すると言うものがあります。つまり、自分の信用情報を自分で確認するという事です。
これは、審査を申し込む金融機関ではなく、個人の信用情報を記録している機関に行うものです。
実は、借入れ審査に当たっては、借入先の金融機関が否認する場合もありますが、金融機関の他にその借入れを保証する保証会社という存在があり、保証会社が借入れを否認してしまうと、例え金融機関が承認と判断しても、最終結果は否認となって返ってくる仕組みになっています。そして、この保証会社は借入れの認否を判断するために信用情報の記録機関に照会しています。従って、信用情報の開示はこの機関に請求することになります。
ただし、この開示請求自体はあまり何度も行うことはお勧めできません。(理由は4.で記述しています。)開示請求は、過去10年以内の借入れや支払いなどで審査に不利になりそうな事があったかもしれないと言う心当りがある様な場合です。
ただし、信用情報は全く心配ないが、念の為に一度だけ開示請求し信用情報の事実を確かめると言うのであれば、審査にも大きな影響はないでしょうから、そこは自己判断によります。(これ、何も無ければ良いですが、本人も忘れていた事実が記録されている場合があるので、要注意です。)
3.信用情報機関
現在、国内には3つの信用情報機関があります。情報開示を請求する機関は、審査を申し込もうとする金融機関によって違ったりしますので、直接問い合わせるか事前審査に必要な信用情報取得に関する用紙(主に「個人情報取得に関する~」などと記載されています。)を確認すると良いでしょう。用紙は、金融機関の多くでHPに掲載されています。
信用情報機関は以下の通りです。
消費者金融会社、金融機関やクレジットカード会社、信販会社など他の業種も加盟している国内で唯一全業態を網羅している国内最大の信用情報機関。
信用情報開示請求の手続きについては、コチラから。
クレジットカード会社、信販会社、百貨店系クレジット会社、消費者金融が加盟しており、3つの信用情報機関中最も多くの情報を記録している。
情報開示請求の手続きについては、コチラから。
主に銀行系の信用情報を取り扱っている信用情報機関。銀行子会社や銀行系のクレジットカード会社も加盟。
全国銀行個人信用情報センターでしか扱っていない情報として官報情報があります。
信用情報開示請求の手続きについては、コチラから。
信用情報の開示請求は郵送やネット、または直接窓口で行うなどの方法があるので、HPでしっかり確認しましょう。手数料はどこも1000円程度です。また信用情報の保存期間は5年となっていますが、全銀協の官報情報は10年となっています。つまり官報情報として記録された信用情報によって借入れ審査が否認されたとすれば、最長で10年はその情報を照会できるので、その間、借入はまず無理と言うことになります。(イヤな話しです。)
4.信用情報開示請求は頻繁に行わないこと
住宅ローンを借りる為に必要な事前審査。そして、その事前審査を安心して申し込めることを確認するために有効な手段が信用情報の開示請求ですが、少々注意が必要です。
と言うのも、審査結果の理由はどんな場合でも教えてくれる事が無いからです。
これは、どんな些細な情報が否認理由だったとしても、それは申込本人には分からないと言うことで、例えば次の様なケースでも否認の可能性はあるとされています。
【まさかの否認シミュレーション】
あと1年以内に抹消される借入れ審査に不利な記録がある。
→ 実はもう消えているのではないか?と言う焦りから、つい信用情報を確認する。
→ 記録は消えておらず、この時点で情報開示を請求したことが信用情報機関に記録される。
→ 既定の期間が過ぎ、記録抹消。それを確かめる為に再び信用情報を確認する。
→ 不利な記録は抹消されているが、またも情報開示を請求したことが記録される。
→ その後、信用情報を照会しに来た保証会社は短期間に複数回の情報開示を請求している事に不信感を抱き、5年以上過去の情報を探ろうとする。
→ 独自の調査手段で抹消記録に辿り着いてしまった場合、信用情報機関に記録が無いにも関わらず、借入れ審査の結果が否認とされる可能性がある。
「えー!?本当にそこまでするか?」と言われれば、実際は分かりません。もしかすると、このシミュレーションの様に短期間に何度も情報開示請求するなど、「少しでも疑わしい場合は否認する。」という、金融機関や保証会社独自の判定基準があるかも知れません。金融機関は一般の方が考えているよりもはるかにリスクを嫌います。それは、過去、借入れを否認された方の信用情報を確認したところ、否認理由として思い当たるものとしては、数年前に携帯電話の分割払いでたった一度引き落としができなかった記録ぐらいだったと言う事実からも理解できます。
また、連帯保証人が必要な場合には、その方の信用情報も照会されますので、自分以外の関係者のことにも注意が必要です。
住宅ローンは金銭の貸借契約であり、あらゆる契約行為の中でも特にルールが厳格です。一般的には「これくらいなら大したことない。」と思える事が大きな障壁になり得るので、借入れ審査は慎重に進めるべきです。この事から、少しでも信用情報に不安がある場合は、経験豊かなプロに相談しながら審査の申し込みを進めることがとても重要になってきます。
#住宅ローン #借入れ #審査前 #信用情報