もし家を建てるなら

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省エネルギーを略した「省エネ」という言葉は今やすっかり根付いていますが、住宅建築における省エネルギー基準については、その内容どころか、そもそもその様な基準が制定されていることさえあまり知られていない、と言うのが実情です。

省エネルギー基準は、オイルショック直後の1980年の初制定から何度も改正され、最新の基準改正は2013年(平成25年)と比較的最近にも関わらず、現代の住宅は、冬には各部屋のこたつなどの局所暖房によって暖を採るという、今だ「古き良き時代!?」感を漂わせるお粗末な性能です。

そこで今回は、国の定めるこの省エネルギー基準の概要を知ることを目的として、お話しをして行きます。

省エネ基準について

 

 

1.省エネルギー基準とは

建物の省エネルギー性能を確保する為の基準を国が定めた指標で、高断熱化を始めとした建物の各種性能を高める施策が取られます。

改正の度に基準の厳しさを増してきましたが、300㎡未満の住宅であれば現行法でも、努力義務のため基準に満たなくても是正義務や罰則はありません。また、2020年の義務化を目指していましたが、昨年の暮れに見送る事が決定しました。

 

省エネ性能が上がれば、光熱費の削減や快適な暮らし、健康長寿な生活を実現できますし、住宅ローンの金利優遇や様々な制度利用時の補助金、減税措置もあるので、短期的にも長期的にも建て主にはメリットがあります

 

 

2.省エネルギー基準の変遷

省エネ基準は、第二次オイルショックのあった1979年施行の省エネ法に応じ、翌1980年に大臣が告示しました。

現在に至る変遷は次の通りです。(住宅に関わる基準のみ記載)
省エネルギー基準の変遷

昭和55年(1980年) 旧省エネルギー基準

平成 4年(1992年) 新省エネルギー基準
・各構造の断熱性能強化
・Ⅰ地域での気密住宅の適用

平成11年(1999年) 次世代省エネルギー基準
・躯体断熱性能の強化
・全地域での気密住宅の適用
・計画換気、暖房設備等の規定追加
・外皮性能(※1)評価基準の導入

平成25年(2013年) 改正省エネルギー基準
(大きな改正はここまで)

・外皮性能評価基準の計算方法変更
・一次エネルギー消費量(※2)基準の導入

(平成28年(2016年)基準追加)

・設備一次エネルギー消費量基準の追加

※1 外皮性能:建物の外皮である外壁・窓・天井・床の断熱性能。改正基準では次世代基準から計算方法が変更しています。
※2 一次エネルギー消費量:石油・石炭など化石燃料、原子力燃料、自然から得られる水力・太陽光などの一次エネルギーに換算して算定する消費量。

省エネ基準の改訂によって向上する断熱性能
省エネ基準は、改訂する度に断熱性を上げ、必要とされる消費エネルギーを減らすという考えで進められてきました。

 

 

3.20年以上過去の基準さえ義務化されない

平成4年新省エネ基準から大きく改訂された平成11年次世代省エネ基準。しかし、平成25年改正省エネ基準は、平成11年次世代とほぼ同じ内容です。そして、2020年には、ようやくこれが最低限達成する基準として義務化される予定でしたが、見送りが決定しています。つまり、20年以上も過去に定めた省エネ基準さえ義務化されないと言うことです。

 

実際、日本は、省エネへの対応が諸外国の中でも最も遅れている国で、熱の出入りが最も大きい窓の性能基準で見てみると

諸外国の窓の熱貫流率
上記は各国の最低基準値で、小さな値ほど優れた性能となります。ここで、省エネ建材として窓に与えられる日本の窓の最高等級の基準値は2.33。

これを上の表と比較すると、どの国の最低基準をも下回る値が日本の最高等級の基準値である事が分かります。

国内最高の基準を満たす住宅でさえ、世界的には最低基準値以下の建物と言う事です。

この様なことから、国では省エネ基準とは別の制度を設け、それらに補助金を出すことで建物の高断熱化(つまり、省エネ化)を促進しようともしています。

 

 

4.国の長期的な省エネ住宅の施策

省エネ基準とは別の制度とは、下記の低炭素建築物認定制度とZEH(ゼッチ)です。

長期的な省エネ住宅の施策

低炭素建築物認定制度は、CO2(二酸化炭素)の排出を削減する建物の基準です。省エネとの関連性は、CO2削減の為に灯油などの化石燃料を用いた暖房を減らそうとすれば、建物の高断熱化が有効で、高断熱化は同時に省エネにも貢献すると言う関係です。

また、ZEHは正式名称である「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、2020年の義務化が見送られた平成25年改正省エネ基準で定める外皮性能を上回る値が定められています。

2030年にはZEH(ゼッチ)が平均的な住宅の基準となる事を目標にしており、上記3つの制度の中ではもっとも厳しい基準となります。

 

更に、世界レベルに近づくべく、より高い基準のLCCM住宅と言う基準も設けています。

これらの基準を省エネ性能順に見ると

各省エネ基準の階層
(エネルギー消費量で比較した順)

この様な順になります。

 

4.1.各基準について

LCCM 住宅(Life Cycle Carbon Minus:ライフサイクルカーボンマイナス住宅)

住宅の建設時から廃棄するまでの生涯にわたるエネルギー消費量を「ゼロ」にする住宅。
詳細はこちら

 

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

外皮や設備の「省エネ手法」を用いて、日常の一次エネルギー消費量を削減する。
その消費量を太陽光発電等の「創エネルギー」とで計算的に「0」にした住宅。
2015年に経済産業省が中心となって、「ロードマップ」が提案されました。
詳細はこちら

 

認定低炭素住宅

建築物省エネ法の基準を満たし、一次消費エネルギーを基準より10%削減する。
更に低炭素化に資する措置を2件以上講じた住宅。
住宅性能表示制度「一次エネルギー消費量等級:5」。
詳しくはこちら

 

 

5.最低限目指すべき基準

現状、真夏や真冬を快適に過ごすには、あまりに性能の低い日本の戸建住宅ですが、果たしてどれくらいの性能を目指すべきでしょうか?

これまで見てきた通り、平成25年省エネ改正基準程度では、とても諸先進国の相手にはなれません。かと言って、LCCM住宅では、省エネを実現する為にあらゆる要件が求められ、現時点ではハードルがかなり高く、建築会社が対応するにはまだまだ時間を要するでしょう。そこで、定められた基準がそれなりに現実的であることから、最低限目指すべき基準はZEHとなるでしょう。実際、ZEHに関しては、かなりの予算を割いた補助金制度があることからも、国の力の入れようが分かります。

ZEH補助金制度の概要

ZEHについては、本ブログでも以前コチラで取り上げていますので、よろしければご覧ください。

 

 

6.最後に

ZEHでは、創エネ設備も設置することになりますが、もし、建物自体の断熱性能だけで高性能化を目指すのであれば、ZEH以上の基準の建物を建てるべきです。

約40年の省エネルギー基準の歴史を経てもなお、世界的には最低水準の日本の住宅。省エネルギーに深く関わる断熱性能も当然低いと言う事になります。断熱性能の低さは、省エネだけでなく、そこに住む人の健康や建物の寿命にも影響することに注目すべきです。

長寿大国日本であっても、健康寿命は平気寿命より10年前後も短いと言う事実。先進国の中にあって、日本の木造住宅の寿命が30年以下と言う事実。大きな投資をして建てる我が家であれば、長きに渡り快適、健康に暮らしたいですよね。

建物の省エネ性能は、その鍵を握る重要な要素です。ぜひ、我が家の建築計画では省エネ性能を本気で考えてみてください。

 

#省エネルギー基準

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