もし家を建てるなら
ブロックプランという住宅建築における設計手法があります。これは、間取りを考える上で地震の揺れを合理的に地盤に逃がし建物を倒壊から守る為の、伝統的な構造計画の手法です。しかし、日本の住宅建築では建築基準法による規制が甘く、このブロックプランと言う構造計画手法はいつの間にか軽視される様になってしまいました。そして、まだ記憶に新しい2016年の熊本震災では、このブロックプランが上手く構成されていない最新の建物が何棟も倒壊するという事実を私たちに突き付けました。
今回は、このブロックプランという構造計画の考え方についてお話しします。
1.ブロックプランとは
建物の間取り(プラン)を考える上で昔からある基本的な設計手法の一つです。
弊社で標準採用している「構造計算」は計算値にもとづく数値的な耐震性の裏付けで、これに加えて採用しているブロックプランは、力の流れに沿った構造材の組み方です。数値では表せない合理的なものの考え方で建物強度の安全性を実現しようとする、その考えは「おばあちゃんの知恵袋!」と言ったところです。
シンプルな骨組みの枠(フレーム)を重ねて造るブロックプランの建物は、地震の揺れにも高い耐震性を発揮し、建築コストの軽減にも貢献します。
2.最新の基準でも足りなかった耐震性
現在の住宅建築業界では、建築基準法のグレーゾーンを突いて、このブロックプランと言う設計手法は、「忘れられた過去」の様な扱いをされ、お客様の「目を引くデザイン」や「構造計算をしたらアウトなプラン」が量産され続けています。
多くの建築会社に沿わず、当社が採用している設計手法こそ、このブロックプランです。
この昔ながらの手法を、なぜ敢えて採用しているのか?それは、2016年4月、住宅建築の耐震性について重大な課題を私たちに突きつけた熊本地震でした。この地震で明らかになったのは、最新の耐震基準に沿った建物も、複数の住宅が倒壊してしまったと言う現実と、その倒壊原因もほぼ同じだったと言う事実です。
こちらは、現地で被災した住宅とその建物の柱の位置を示すものです。
(日経ホームビルダーHP「耐震性能住宅の盲点 「2000年基準」倒壊の理由 「新耐震住宅」はなぜ倒壊したか(2)」の写真と資料より加工)
1階と2階の柱を重ねて示しており、緑色の四角は2階の柱の内1階に柱が無い箇所を示します。
1階と2階の柱の位置が一致している比率を「直下率」と言い、この建物では半分にも満たない47.5%。引用元の記事で確認できますが、地震に抵抗する為の壁「耐力壁」に至っては、なんと17.8%(X方向)しかなかったと言うことです。
(日経ホームビルダーHP「耐震性能住宅の盲点 「2000年基準」倒壊の理由 「新耐震住宅」はなぜ倒壊したか(2)」より)
記事にある通り、新築から日も浅く耐震等級3(最高等級)に匹敵する耐震性を保有し、合法な建築であっても、複数の建物に被害が出てしまったと言う事が、この建築業界に激震を走らせました。
建築基準法の耐震性については、1981年(昭和56年)に「新耐震基準」と呼ぶ大きな改正があり、その後1995年(平成7年)の阪神淡路大震災の教訓から、2000年にも改正され、この「2000年基準」では震度7の地震でも倒壊には至らない事を想定した内容のはずでした。
ところが、熊本地震では震度7の揺れが3日間に2度も起こると言う特殊な状況とは言え、震度7で実際に倒壊した建物が発生したと言うことで、建築業界も慌てたと言うことです。
3.全うな対策を講じること
阪神淡路大震災以降、日本は地震活動期に入ったと言われ、「独自」の資材や工法で様々な耐震工事を勧めてくる抜け目のない業者もたくさんあります。
国や各自治体も耐震改修工事に補助金制度を設けており、最近は一般の方も耐震工事についての関心が高いのですが、言われるがままにした耐震工事が、自治体が認めていない資材や工法による改修だったため、みすみす補助金をフイにしてしまったと言う方が実際にいらっしゃいます。
ここでは、新築について述べて行きますが、現在お住まいの建物の耐震化をお考えであれば、補助金が使える様な全うな工事をぜひご検討くださいね。
さて、新築においてまず最初に取るべき全うな対策は、文句なしに「構造計算」の実施です。
建築業界に身を置きこれを否定する人がいたら、かなり問題と思った方が良いです。特に「建築基準法では、一般的な規模の木造住宅は構造計算が不要なんです。」などと説明されたら、退散した方が得策です。
建築基準法には、一定規模以下の木造住宅の安全性について、構造計算書を確認申請書類にいちいち添付しなくて良いと言う内容であって、構造計算が不要とは書かれていませんので。
構造計算は、当社の新築工事では標準仕様としており、全棟構造計算実施が当たり前です。建物の耐震性が気になる!と言う方は、ぜひお近くのスタジオにお越しくださいね。
では、本題のブロックプランです。
ブロックプランは、柱をシンプルな四角形の四隅に配置し、その上下を土台や梁などでつないで作る「立方体の構造材」で、この立方体ごとに水平につなげたり、垂直に重ねて建物全体の耐震性を確保するものです。
立方体はどこから力が加わっても、まんべんなく骨組み全体に力を分散させる事ができる理想的な構造で、その中を更に間仕切用の柱を加える事ができ、自由度の高い間取りができるので、木造注文住宅とは非常に相性が良いのです。
特に、アイジースタイルハウスでは、垂直に重ねる場合、1階の立方体の角の柱の上に必ず2階の柱を合わせるので、立方体同士の柱の直下率は100%となり、より建物の剛性を向上しています。
左の図の通り、ブロックプランの柱が合わない所では、無理な荷重の掛かり方をする為、それを支える別の構造材(梁など)に偏った力が加わり、部分的に弱い箇所を作ってしまいます。
また、この手法はシンプルなルールに従うだけで良く、リフォームをする際の自由度にも影響しない為、家族構成の変化に伴う間取りの変更でも、構造体としての耐震性は損なわれないと言うメリットもあります。
更に、外観もシンプルにまとめやすく、形状が複雑化して無駄にコストアップするのを防ぎます。
もちろん、最初に書いた「耐力壁」の位置も自ずと合ってくるので、耐力壁の直下率も自然と高くなり、より耐震性の向上に貢献します。
4.まとめ
この様に、ブロックプランは非常にシンプルな考えでありながら、合理的に建物の耐震性を確保し、経済性にも優れ、将来の可変性にも柔軟に対応する優れた設計手法と言うことがお分かりいただけたと思います。
では、なぜこれほどまでに国内では、この手法が使われないか?と言うと、
- 建築基準法では、木造住宅の構造計算書の提出義務が無いと言う内容になっている。
- 構造計算をしなくても、「設計士がちゃんと安全性をチェックした。」と言う建前のもと、構造上(耐震性に)無理のある設計も可能となる。
- 構造的に無理があっても、お客様の目を引ける間取りや外観デザインの為には、構造上の無理ができなくなるブロックプランを採用する訳には行かない。
と言うところでしょうか。
アイジースタイルハウスでは、ブロックプランの採用、構造計算の実施の他にも、建物の耐震性を高める為の様々な工夫をしています。詳しくは、下記バナーよりご確認頂けます。
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#ブロックプラン #耐震性 #直下率