もし家を建てるなら
気密性は高断熱住宅に欠かせない性能です。なぜなら、気密性が低いと屋外との温度差がある室内の空気が外壁内や屋根裏に漏れ、結露を発生し建物を腐朽させたりカビを発生させてしまうからです。しかし、気密性を重視しない建築会社などでは、なぜか風通しの話しに置き換え、「高気密住宅は息苦しくなる。」と誤った情報を伝えることもある様です。
気密の役割は、室内空気を入れ替えるための風通しの良し悪しとは違います。
今回は、結露発生の仕組みを理解しながら気密の役割が重要であることを、簡単なイメージ図を使ってご説明します。
(本記事は、2019年1月24日の内容を改訂し、再公開したものです。)
1.住宅の気密性とは
建物の隙間の少なさを示し、建物の熱損失や計画換気、高断熱化で課題となる結露リスクの回避などに影響する大切な性能です。
気密性は実際に建物を建ててからしか計測できず、計画段階での知識と経験が求められます。
現行の省エネ基準のベースとなっている1999年(平成11年)制定の次世代省エネ基準でかつて定められていた気密性能(※)は、相当隙間面積という名称で5㎠/㎡となっていましたが、高断熱化が当たり前となった現在では、最低でも2㎠/㎡を切ることが必要でしょう。
弊社では標準仕様での気密値を0.5㎠/㎡以下としています。
※ 2009年(平成21年)の一部改正以降、気密性に関する基準は削除されています。
↓アイジースタイルハウスの高気密高断熱についてはコチラから。
2.気密性の高め方
気密性を高めるには隙間を無くすとことです。
↓こんなイメージ。
正しい断熱材の設置の仕方
図の赤枠の様に、防湿層によって隙間なくすことで、室内の空気が逃げない様にします。
そして、室内の湿気は、計画換気によって設置した換気扇などから放出するか、場合によっては窓の開閉によってコントロールするというのが標準的です。当社の場合は、外壁自体が呼吸することで調湿もしています。
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3.気密性が必要な理由
さて、なぜ住宅に気密性が求められる様になったのでしょうか?
それは、1970年代後半から家の中で快適に過ごすために普及し始めた断熱材が大きく関係します。
断熱材が普及し始めた頃の住宅のイメージ
断熱材が普及しはじめた当初は「室内の温度が逃げない様にすれば良い。」程度の考えから天井、外壁内、床下に適当に断熱材を設置する程度でした。
しかし、上の図の通り、断熱材は部位ごとに分断されており、所どころ断熱材が行き渡らず多数の隙間が発生していました。そして、その隙間に室内の温かい空気が流れ込みます。
温かい空気が断熱材のない隙間に向かって流れ込み、屋根裏、外壁内に広がる
温かい空気は、より温度の低い方へ流れるため、屋根裏や外壁内などに広がります。
そして、温かい空気に気体として含まれていた湿気が、屋外の気温で冷えた屋根や外壁に触れることで、結露が発生します。
漏れた温かい空気が冷えた屋根、外壁に触れて結露が発生
この状態が長期に渡ると木材にカビが生えたり腐朽したり、シロアリの餌となったりします。
この様に、結露によって大切な建物が傷んだり住む人が健康を害したりしない様、室内の空気を漏らさないことが求められる様になったことが、住宅に気密性が必要な理由です。
4.昔の家は結露しなかった?
ところで、「気密性を上げると風通しが悪くなり湿気を逃がしにくくなる。だから、高断熱住宅でも高気密にする必要がない。」と言う主張があります。一見、正しそうですが、これは「気密」という言葉が持つ「建物が呼吸できないイメージ」による勘違いです。
淀んだ空気を入れ替えるために行うのが換気で、現代では、換気設備によって機械的にコントロールします。もちろん、窓の開閉によって意図的に行うことも可能です。
換気設備の無かった昔の家は、窓の開閉による換気もありましたが、そもそも隙間だらけだったので、人の意図とは関係無く1日中換気が行われ、湿気がこもることがありませんでした。
昔の家の隙間だらけのイメージ
あらゆる隙間から空気と一緒に湿気も屋外に常時放出されていた昔の家
それまでは、結露が発生しない代わりに夏は倒れそうなほど暑く、冬は凍えそうなほど寒くて不健康な家と言うのが当たり前で、断熱や気密以前の問題があります。
5.放湿のために隙間を増やすのは間違い
断熱性が向上したことで室内の温かい空気が湿気の運び屋となってしまうと言うのが、断熱材が普及し始めた頃の大きな問題でした。
この対策として、一部では「隙間を増やして気密を低くすれば良い。」という意見がありますが、もちろん間違いです。
なぜなら、室内を温めたそばから空気が隙間から逃げ出し、室内を温めることができないからです。隙間をすごく増やして気密性がほぼ無い状態にすれば、温かい空気と一緒に湿気も屋外に放出されるので、屋根裏や外壁内に結露は発生しないでしょう。しかし、それでは、断熱材を入れない昔の家と同じです。室内が温かくならないので、そもそも断熱材を入れた意味が無くなり本末転倒ですよね。
これが、高断熱住宅でも高気密にする必要が無いと言う意見のミスポイントなのです。
6.最後に
高断熱住宅は、省エネ面で有利ということもありますが、家が長持ちし住まい手が長期に渡り健康でいられる様になることも長所だと思います。
高断熱住宅は、ごく当たり前の考えになって行くでしょう。しかし、先進国の中では、日本の木造住宅はまだまだ遅れています。
これは、世界一の長寿命国にも関わらず、寝たきりになるまでの寿命を指す健康寿命はそれほどでもないと言う事実が示しています。
これから、夢のマイホームを取得するのであれば、まず、正しい高気密高断熱である事が必須です。
それを実現するためには、この記事の結露の仕組みと気密との関係の様に、しっかりと正しい知識を身に着けて欲しいと思います。
高気密高断熱住宅のメリット、デメリットについては、こちらの記事で述べていますので、よろしければどうぞご覧ください。
また、弊社の断熱化の取組みについては、こちらからどうぞ。
#気密性 #結露