もし家を建てるなら
近年、冬になると、ヒートショックについての注意喚起を必ずニュースで聞く様になりました。
ほんの10年ほど前までは、これほど頻繁には取り上げられなかったと記憶していますが、年間の交通事故死者の数倍もの方がこのヒートショックによって亡くなっていると言う推計は、国民の生命、健康に関わる重大事項だという認識が浸透してきた証拠でしょう。
しかし、このヒートショックは、住まいの断熱性を改善するだけで予防できる可能性が格段に高まります。
今回は、ヒートショックの実態と原因、そしてその対策の考え方について述べてまいります。
1.ヒートショックとは
ヒートショックとは、急激な血圧の上昇下降が短時間に繰り返される事によって身体に負担が掛かる症状です。血圧の急激な昇降によって、失神による溺死、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。
入浴中の心肺停止発生件数は、東京都健康長寿医療センターによる2011年(平成23年)の推計では約17,000件。同じ年の交通死亡事故者数4,612人の実に3.6倍以上です。
2.冬季の発生が圧倒的に多い
下のグラフは、全国で発生した入浴中の心肺停止者数を示します。
12月、1月をピークに、冬季に集中しています。
心肺停止となるきっかけはヒートショックと考えられており、それは温度差の激しい部屋から部屋への移動によって発生します。
冬季に集中している事から、暖房中の部屋と無暖房の部屋との激しい温度差がヒートショックを起こす原因と考えられています。
3.ヒートショック発生の仕組み
ヒートショックは、次の様な行動で起りやすくなります。
- 冬場、暖かいリビングなどから寒い脱衣所に移り衣類を脱ぐと急激に身体が冷えます。
- 血液の流れが悪くなりその流れを元に戻そうと身体は血圧を急激に上昇させます。
- 浴室に移り熱い湯船に入ると身体が温まると、今度は逆に急激に血圧が下降します。
- 急激な血圧の昇降の繰り返しによってヒートショックが発生。
ヒートショックは、失神による溺死、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。
4.温暖な地域に多いヒートショック
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 平成26年3月26日プレス発表資料より
このグラフは入浴中に心肺停止状態(CPA)となられた方の都道府県別グラフです。ご覧の通り、発生件数の多い上位を見ると香川、兵庫、滋賀など温暖な地域に発生しています。
少ない方を見ると、沖縄を除き(※)北海道、山梨、青森と寒冷な地域です。((※)沖縄の気候条件によって、宅内寒暖差が出にくく、発生件数は最小となっています。)
温暖な地域の建物は、冬の寒い期間が限定的なので寒暖差対策が弱いので冬の部屋ごとの寒暖差が出やすく、発生件数が多いと推測できます。
寒冷地域で当たり前の寒暖差対策は、本当は温かい地域の建物にも必要と言うことです。
5.ヒートショック対策
命に関わるこの様なヒートショックから身を守るのは「寒暖差の無い暖かい家」である事が大前提です。
しかし、暖房機器で局所的に暖めるのは、風邪をひいてから薬を飲む対症療法と同じで、根本的な解決にはなりません。その様な事後対策よりも、そもそも宅内に寒暖差を作らずヒートショックを起こさない環境にする事が肝心なのです。つまり、まずは断熱工事をしっかり行った高断熱住宅である事です。
家の中で起るヒートショックの対策は、建物を断熱化すると言うことです。断熱化と言うのは、室内外の熱を出入りさせない様にするという事です。
詳しくは、別記事「充填断熱工法の種類と特徴」、「外張断熱工法の種類と特徴」をご覧ください。
アイジースタイルハウスの家づくりでは、断熱を二重化することで高い断熱性能を確保しておりますが、その他にも健康や快適性に関わる工夫がなされています。
6.最後に
発生件数は交通事故よりも遙かに多いという推計にも関わらず、一般的には、ヒートショックによる死亡事故への関心は交通事故よりも低いと思います。
ヒートショックは、相手のある交通事故と違い自らの対策で未然に防ぐ事が可能です。断熱工事をしっかり行い、快適な暮らしと健康長寿を、ぜひ手に入れてください。
また、断熱工事による効果には、寒暖差の解消以外にも重要な役割があります。詳しくは、「断熱性能で結露を防ぎ耐久性を高める」をご覧ください。
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