もし家を建てるなら
シックハウス症候群の相談件数がピークに達した年は1998年です。アメリカでは70年代からシックビルディング症候群という言葉で定着しており、 日本でも90年代後半から頻繁に耳にする様りましたが、近年ではほとんど聞かれなくなりました。
シックハウス対策法が2003年に施行され、その後、年を追うごとに相談件数は減少し確実に効果が出ていましたが、2014年からは一転、増加傾向になっています。
シックハウス症候群の原因は、かなり広い範囲に渡る要因がリスクと言われておりますが、住宅を新築する際に考えられる対策についてお話しします。
1.シックハウス症候群とは
シックハウスを文字通りに見れば「病気の家」となるので、「病気の家を原因とする疾患」と言えます。ただ、これでは、「病気の家ってどういう意味?」とか、「で、具体的にどんな症状になるの?」といった疑問が湧きますね。
シックハウス症候群は様々な症状があり、推測される原因も人によってバラバラです。更にそれらが複合的に絡む場合もあり、一言で「コレが原因」と言えず、あらゆるものが原因になり得ます。後述しますが、シックハウス症候群の明確な定義自体が無く、公的には狭い範囲の症状を指しており、根本的な解決や対策は困難であると認識されていることが分かります。
2.増加に転じている相談件数
冒頭で述べた、シックハウス対策法施行後の成果と現状について述べます。
下のグラフの通り、住宅紛争処理センターに寄せられるシックハウスの相談件数は、シックハウス対策法の施行7年後にはピーク時の5分の1以下になりました。これは、法による規制の効果が確実にあったということです。
ところが、その後しばらくするとわずかながら増加に転じている事が、毎年の集計で明らかとなってきました。
(公益財団法人 住宅紛争処理支援センターのデータを元にIG Style Houseにて作成)
社会問題となった頃から比べると、相談件数が激減していることと20年近い年月が流れていることから、人々の記憶からはこのシックハウス症候群と言う症状は忘れられている様です。これは、新聞などのメディアでもほとんど見かけなくなったことからも言えることだと思います。
しかし、相談数が最も減った年でも、ピーク時の2割近くの相談があった事、その後も同程度の数で推移し、最近では増加傾向に転じていることを考えると、何らかの原因があるはずです。
現時点では、残念ながらあまり取り上げられることの無くなってしまった社会問題ですが、いつ自分事になってもおかしくないことです。
ここで一度シックハウス症候群についておさらいしておきましょう。
3.シックハウス症候群の公的な定義は限定的
シックハウス症候群の定義としては、厚生労働省健康局生活衛生課のHPのものが参考になります。
近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘され、「シックハウス症候群」と呼ばれています。その症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など人によってさまざまです。
と記載されていますが、他に公的なものは見当たらず明確な定義は無いようです。
シックハウス症候群と思われる症状があまりにも多岐に渡る上、原因も明確ではないことで、定義しづらい現象と考えられている様です。
4.シックハウス症候群の症例
症例には下図の様にあらゆるものが疑われます。
意外なものでは、内臓疾患や精神疾患も含まれると考えられています。
5.シックハウスの原因
シックハウス症候群の症例が多岐に渡るのと同様、様々なものが原因と考えられます。
NPO法人のシックハウス診断士協会では、次の様に考えています。
- 建材から揮発する化学物質
- 家具などから揮発する化学物質
- 換気不足
- ダニ・カビ
- 体質の変化
- 日常生活用品
この他にも、近年膨大な量となった住宅の電気配線から発生する電磁波も一因と言う考えもあります。(シックハウス診断士協会HP シックライフという考え方)
シックハウス診断士協会HPより
上記の様なことが原因で、人に身体的、精神的に何らかのつらい症状を引き起こす家が「シックハウス」であると言えます。
6.住宅のシックハウス対策はタイミングが肝心!
考えられる対策としては
■持ち家の場合
- 家をこまめに清掃、換気をする(すぐできる)
- リフォームする(資金、時間、労力、精神力の問題がある)
- 建て替えるか、別の土地で新築する(資金、時間、労力、精神力の問題がある)
- 中古住宅を購入して引っ越す(資金、時間、労力、精神力の問題がある)
■賃貸の場合
- 引っ越す(すぐにできなくても実現しやすい)
- 大家さんに掛け合い、改装してもらう(時間、労力、精神力の問題がある)
といったくらいですが、実際、清掃以外は現実的な対応とは言い難いですよね。
そう考えると、これから我が家の新築を計画するのであれば、その対策を取る絶好のタイミングと捉えることもできます。
予防医学同様、発症を未然に防ぐ為にもシックハウス対策も我が家の新築計画に盛り込んでしまう。と言うことです。
6-1.対策のポイント
とにかく、居住者が有害物質にさらされない様にすることです。
別記事「健康住宅ってどんな住宅?」でも述べましたが、次の対策が有効です。
【対 象】有害化学物質
【原 因】有害化学物質の室内への揮発
【対 策】無害な建材の選定
【対 象】ダニ、カビなど
【原 因】発生した水分を栄養にした繁殖
【対 策】建物の断熱化による結露の防止
【対 象】電磁波
【原 因】使用電気量の増加に伴う、屋内配線の増加
【対 策】アース付コンセントの採用・オールアース工事
注意点は、上記はどれも個人では対応しづらく建築業者の協力が必要なことです。
家具からの化学物質、換気不足、日常生活品への対策は、個人でも対処できますね。
各対策の方法は次の記事を参考にしてみてください。
【対 策】無害な建材の選定 → シックハウス対策の基本
【対 策】建物の断熱化による結露の防止 → 断熱性能で結露を防ぎ耐久性を高める
【対 策】アース付コンセントの採用・オールアース工事 → 電磁波対策工事
7.最後に
シックハウス症候群は、花粉症同様一度発症すると完治が困難な疾患です。
しかし、報告されている疾患者の数が限定的で、2003年以降の減少傾向に伴い世の中の関心はどんどん薄れ、ニュースでもほとんど取り上げられなくなりました。
しかし、今も発症報告はされ続けており、中には重篤な過化学物質過敏症で日常生活もままならないと言う人がいるのも事実です。
もし、これから夢の我が家を建てると言うところであれば、ぜひこのシックハウス症候群への対策も考えてみて下さい。
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