もし家を建てるなら
近年、木造住宅における断熱性能を重視されるお客様が日常的になってきたと感じます。外観や設備の豪華さよりも、日々の暮らしの質を大切する方が増えてきたのだと思います。
高い断熱性能で実現できるのは、ちょうど良い温熱環境の快適な空間です。
・快適な空間は、ちょうど良い温熱環境から生まれます。
・ちょうど良い温熱環境は、適切な温度と湿度から生まれます。
・適切な温度と湿度は、建物の断熱性能の高さに依存します。
木造住宅における断熱は、室内を快適な空間とする為に必要なちょうど良い温熱環境を実現する為にとても大事なポイントなのです。
(本記事は、2018年5月6日の内容を改訂し、再公開したものです。)
1.断熱性能とは何か?
断熱という言葉を辞書で引くと、「熱を伝えないこと」とあります。
室内の異常なほどの夏の暑さ、冬の寒さは、建物が熱を伝えやすいからで、断熱性能の低い住宅では、冷暖房をほぼ一日中点けっぱなしというのもめずらしくなく、光熱費がかさんで家計も圧迫しています。
また断熱性能は、お金だけでなく、住む人の快適性や健康、そして寿命にも関わります。
光熱費の軽減、快適性の向上、健康の維持という様々な観点から、住宅を高断熱にすることが非常に大事なのは明らかです。
2.断熱性能の差による違い
分かりやすいところでは、電気やガスなどの光熱費の節約です。
下記の通り断熱性能の違う住宅の比較では、明らかな光熱費の差があります。
1年間の電気代比較
一般的な断熱性能 | 高断熱性能 | |
1月 | ¥19,019 | ¥8,650 |
2月 | ¥17,281 | ¥8,482 |
3月 | ¥17,780 | ¥7,782 |
4月 | ¥17,557 | ¥5,708 |
5月 | ¥14,496 | ¥5,335 |
6月 | ¥13,564 | ¥5,361 |
7月 | ¥12,344 | ¥5,233 |
8月 | ¥17,678 | ¥4,977 |
9月 | ¥20,933 | ¥5,738 |
10月 | ¥14,974 | ¥4,695 |
11月 | ¥13,156 | ¥5,522 |
12月 | ¥19,500 | ¥7,943 |
年間 | ¥198,282 | ¥75,426 |
差額:¥122,856
1年間のガス代比較
一般的な断熱性能 | 高断熱性能 | |
1月 | ¥10,152 | ¥5,823 |
2月 | ¥10,824 | ¥7,600 |
3月 | ¥13,120 | ¥7,805 |
4月 | ¥13,120 | ¥6,945 |
5月 | ¥10,796 | ¥6,044 |
6月 | ¥9,734 | ¥5,471 |
7月 | ¥8,127 | ¥4,856 |
8月 | ¥6,363 | ¥3,914 |
9月 | ¥4,221 | ¥3,665 |
10月 | ¥4,368 | ¥3,791 |
11月 | ¥6,250 | ¥4,815 |
12月 | ¥10,200 | ¥5,231 |
年間 | ¥107,275 | ¥52,123 |
差額:¥55,152
表の各住宅の断熱性能の目安は次の通りです。(UA値は、いずれも地域区分(※1)の6地域での数値)
・一般的な断熱性能:次世代省エネ住宅レベル(UA値0.87W/(m2・K))
・高断熱性能:HEAT20(※2) G1グレード(UA値0.56W/(m2・K)
この目安からも、国の省エネ基準が示す断熱性能では、大変低いレベルであることが分かります。
UA値は、建物の断熱性能を示す指標。屋根、外壁、開口部、床からの熱の逃げやすさを数値で表したものです。
※1 地域区分:地域ごとに異なる気候に合わせて省エネ基準を定めるための区分。省エネ基準では断熱性能UAの値が指標となる。
※2 HEAT20:低すぎる国の省エネ基準をはるかに上回る断熱性能の建物の実現を目指して活動する民間の断熱基準の提唱団体。現在では、こちらの方が業界標準となっている。
もう一つの違いは、体感的なものですが快適性が挙げられます。快適性の良否は、主に室内の温度と湿度である程度表現できますが、同じ温湿度でも快適かどうかは個人差がある上、湿度のコントロールは使用材料や気密性にも関わる性能なので、ここでは体感的な快適性の違いという表現に留めておきます。
ただし、高断熱な住宅で実現できる室内の暖かさは、身体に負担の少ない室内の温熱環境となることは公的な調査で明らかになりつつあります。これは健康と寿命に関わる違いとなり、光熱費より重要な違いと言えるかもしれません。
近年、冬のニュースで良く聞く「ヒートショック」は、浴室など宅内での死亡事故を招いており、断熱性能の低さが原因です。
(詳しくは → ヒートショックと対策)
3.各社で異なる断熱性能の優先度
上記の様な理由から、住宅の断熱性能が大事なことはご理解いただけたと思います。しかし、この断熱性能をどの建築会社も重要視しているとは限りません。それは、お客様にご提供する価値の優先度の違いによるもので、価格やデザイン、設備などを重視し、性能はそれらよりも低い扱いのところがあるもの事実です。
もしあなたが、わが家で快適に過ごしたり、建築後の光熱費を抑えたり、健康を維持したりした家づくりをお考えであれば、断熱性や耐震性、メンテナンス性など建物の性能をどう考え、実現しているのかを詳しく説明してもらう様にしましょう。
アイジースタイルハウスでは、断熱性に関してはUA値0.46W/(m2・K)をクリアし、愛知県、静岡県が含まれる6地域においては、断熱等級6の取得が可能なHEAT20 G2グレードを標準仕様としています。
4.断熱性能が低い原因
ところで、断熱性能の低い住宅は何が原因なのでしょうか?
住宅の断熱性能に影響するのは、主に次の2点です。
・材料の素材の性質が影響している場合
・施工品質が影響している場合
断熱性能が低い「原因」は、この様な建物というハード面によるものと、国の制度の様なソフト面によるものがあります。
4.1.材料の性質が影響している場合
その素材自体の熱の伝わりやすさが原因です。
例えば、低温の空間においた木と鉄では鉄の方が冷たく感じますし、高温なら鉄の方が熱く感じます。これは鉄の方が素材として温度を伝えやすい性質の材料だからです。建築資材の材料でも、例えばアルミサッシと樹脂サッシでは数値の上でも体感でも明らかな断熱性の違いがあります。
4.2.施工品質が影響している場合
断熱材が適切に設置されていない事が原因です。
例えば、外壁の中に入れる断熱材の場合、いくら性能の良い断熱材を使ってもあちこちに隙間がある様な設置状況では、そこから室内外の温度が伝わり合ってしまい断熱材としてほとんど機能しないことが分かっています。
これは、施工品質によるもので現場管理のレベルが問われます。断熱工事の施工品質が保たれるために、その建築会社ではどの様な対応をしているのかを確かめることが大切です。
4.3.国の対応も原因のひとつ
最後は、これまでの国の対応です。
断熱性能の向上は、省エネ性能を実現する手段の中で最も現実的で効果的なものです。国は住宅性能を引き上げようと、段階的に省エネ性能を示す基準を策定してきました。
しかしながら、厳しい基準にしてしまうと、大手以外の多くの建築業者の技術がついて来れず、国の住宅施策への影響の大きさを懸念し、先進国の中でもダントツに低い指標を基準としました。
5.変わりつつある断熱政策
ところが、近年では断熱性能の重要性を訴える建築業者が増え、その声に応えるように、国にも住宅の断熱性能の高性能化を目指す動きが出てきています。その動きのひとつが新たな断熱等級の設置です。
これまでは、次世代省エネ基準のUA値0.87W/(m2・K)さえクリアすれば、それ以上の値の住宅も全て最高等級4の取得に留まりましたが、今後は2022年に設置された新たな等級5、6、7もそのUA値によって取得できる様になるなど、国の断熱政策も変わりつつあり、今後は住宅の断熱性能が重要視される動きが出てきています。
6.最後に
今回は、木造住宅における断熱の役割、影響、性能が低くなる原因などをお伝えしました。
断熱性能は、住まい手にも建物にも非常に重要な役割を担い、ようやく国も真剣に取り組み始めたテーマです。建物の断熱性は非常に重要で、光熱費や健康に深く関わります。
実際には、高断熱性能は高気密であることとセットで効果を発揮します。逆に、この気密性能が低ければ、高断熱であることがアダとなり、建物の寿命を短くしてしまう原因にもなりかねません。
この様に、メリットの確かな住宅の高断熱化は必須ですが、使う材料や断熱工事だけでは済まない難しさがあるため、これから高断熱住宅を建てようとするのであれば、断熱に関する知識、技術、実績がしっかりとした建築会社にご相談されることを強くお勧めします。
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