もし家を建てるなら
気候変動の影響か夏の暑さが厳しさを増し、室内での熱中症発生が頻繁になってきた様に感じます。特に高齢者や子供はそのリスクが高く、注意が必要です。今回は「健康を守る!住宅内でできる熱中症対策」と題し、家庭内で実践できる効果的な熱中症対策の方法をご紹介します。基本的な予防策から温度や湿度の管理、エアコンや扇風機の使い方、遮光カーテンの活用までを解説します。
1. 住宅内での熱中症対策の基本
住宅内での熱中症に効果的な対策として、こまめな水分補給やエアコンの適切な使用が挙げられます。また、室温の管理や適度な休憩も重要です。正しい知識で適切な対策を講じましょう。
1.1. なぜ室内でも熱中症が起こるのか
室内でも熱中症が起こるのは、昨今の夏の異常な高温と日本特有の湿度の高さが大きな原因です。更に、断熱性の低い建物でエアコンを使わない場合、室温が急上昇しやすく、特に高齢者や子供の身体は体温調整が難しいため、知らぬ間に体温が上がり、熱中症の症状が現れます。また、家事など室内での活動量も関係しています。このような状況が重なると、室内でも熱中症が起きやすくなります。
1.2. 熱中症の初期症状とその対策
熱中症の初期症状としては、めまいや生あくび、立ちくらみなどがあります。これらの症状が現れた場合、すぐに涼しい場所へ移動することが大切です。次に、水分補給を行いましょう。水分だけでなく、塩分も同時に補うことが重要です。また、冷たいタオルで体を冷やすことも効果的です。特に、首やわきの下を重点的に冷やすと良いでしょう。さらに、休息を取ることも忘れずに行ってください。これらの対策を早期に行うことで、重症化を防ぐことができます。
1.3. 基本的な予防策
室内での熱中症予防には、適度な水分補給やエアコン、扇風機を活用した室温調整、また、あまりに暑い時間帯には掃除など体力を消耗するの活動を控え、疲れを感じたらすぐに身体を休めることなどを毎日の生活習慣にすることが大切です。
2. 温湿度管理の重要性とその方法
温湿度管理は、快適な生活環境を保つために欠かせない要素です。適切な温度は、身体の健康や集中力に大きく影響を与えるからです。また、比較的高温ではなくても湿度によっては、熱中症となる可能性もあります。そのため、室内の適切な温湿度管理は大変重要です。具体的な方法として、主にエアコンを用い扇風機や遮光カーテンで補強する室温調整についてお話ししていきます。
2.1. まずはエアコンを使う
例えば、令和5年の屋内での熱中症による死亡者のエアコン使用状況について、東京都保険医療局の報告では、下記グラフの通りエアコンの設置無しを含め90%もの方が使用していなかったとのことです。このことからも、まずはエアコンを使うことが屋内での熱中症対策には必須であると言えます。
令和5年夏期の屋内熱中症死亡者のエアコン使用状況
2.2. エアコンの冷気を部屋の隅まで届ける
夏期のエアコンの冷房設定温度は25度~28度が推奨です。また、最近の住宅でよく見かける、ほとんど間仕切壁のないLDKの様に大きな1区画の空間の場合、扇風機やサーキュレーターなどを使って室内の空気を攪拌し、部屋の隅々まで冷気を届け室温を均質化させると、部屋のどこに居ても温度差を感じず快適に過ごせるだけでなく、単にエアコンの設定温度を下げるよりも冷房費の節約にもなります。
2.3. 遮光カーテンを利用する
一般のホームセンタ―でも購入できる遮光カーテンは、窓から入る光だけでなく直射日光による放射熱(輻射熱)を緩和する働きがあります。これは、強い陽射しの中で使う一枚の薄い生地でできた日傘の効果を思い出せば、分かりやすいでしょう。
特に、南側の窓でも庇が無かったり短い場合や西日が入ってしまう窓には、遮光カーテンは有効です。より遮熱効果の高い遮熱カーテンを使うという手もあります。ただし、いずれもエアコンとの併用を強くお勧めします。なぜなら、遮光カーテンは単なる素材であるため、直射日光からの熱の侵入を和らげることしかできず、室内の温度をエアコンの様に強制的にコントロールすることはできないからです。あくまで、エアコンの補助と考えましょう。また、効果的なのは日中となりますが、陽射しを遮ることから、室内が暗くなるという点にも注意が必要です。
2.4. 湿度調整はエアコンにお任せ
湿度調整については最後となりましたが、それは、夏場の湿度調整はエアコン一択であるためです。日本の夏は多くの地域で湿度が高く、湿度調整は除湿に限られます。エアコンで室内温度を下げれば、相対湿度は自然に下がるのでそれほど気を遣わなくて良いのですが、冷房するほどでもないが除湿したいという場合には、家庭用の除湿器を使うのも一定の効果があります。ただし、気温が高い場合に使う除湿器は、コンプレッサー式がお勧めです。デシカント式という製品もありますが、これはヒーターを使うため、除湿中に室温が3~4℃上昇するため、夏の季節には不向きです。
ちなみに、下の表の通り室温がそれほど高くなくても一定以上の湿度がある場合、熱中症になるリスクがありますので、ご注意ください。
3. 住宅新築計画でできる熱中症予防
ここまで、既存建物の屋内(室内)での熱中症予防について解説してきました。ここからは、住宅をこれから建てるという場合にできる、熱中症予防のお話しです。
3.1. 基本はエアコン
もっとも効果的な室内温度のコントロールは、今のところエアコンに勝るものは無く、これから建てる住宅であっても、やはり熱中症対策の基本はエアコンです。そして、室内のサーキュレーション(攪拌)や遮光カーテンの併用による補助も同じです。
3.2. 熱中症対策のコストパフォーマンスを上げる
住宅建築においても、既存建物と熱中症対策が同じなのであれば、どんな効果を期待して何をするのか?ですが、それは、より効果的な熱中症対策をより優れたコストパフォーマンスで実現するということです。
より効果的であるというのは、エアコンでの室内冷却が早いこと、より優れたコストパフォーマンスであるというのは、冷房費を抑えたり、遮光カーテンなどへの余分な出費を抑えることです。
4. 住宅新築計画ならではの熱中症予防策
具体的には、まず建物全体の断熱性を上げるということです。建物は常に屋根、壁、窓や外部ドア、最下階の床(基礎)から常に熱が室内外を行き来します。夏場は、外部からの熱の侵入をどれだけ抑えるかということになりますから、やはり、建物の断熱性能が影響します。次に、夏の直射日光の入射をコントロールすること、効果的なエアコンの設置と続きます。
4.1. 建物の高断熱化
厳密には、高気密化とのセットが前提ですが、建物内外の熱の出入りの抑制には、まずは建物の高断熱化です。その為には、断熱性能の高い断熱材を精密に施工することが重要です。この「精密に施工する」というところがポイントで、いくら高性能断熱材でも設置後の隙間が多いなど施工品質が悪ければ、断熱性はほとんど発揮されません。
効率的な断熱性能を発揮する外張断熱
4.2. 夏の直射日光をコントロールする
これは、建築建物への実際の日射を考慮した上で、庇の長さや窓の位置、大きさを決め、夏の日射を抑えつつ冬には日射をなるべく取り込むという建築計画です。これには、近隣建物による建築建物への日影の影響も考慮する必要があるため、経験的な勘ではなく、日影図など裏付けとなる資料を作成した上で進めます。
南側に大きく張り出した庇で夏の直射日光をカット
4.3. 効果的なエアコンを設置する
例えば、昨今の高性能住宅では、その断熱性能の高さを活用し、小屋裏(屋根裏)に連坊専用のエアコンを1台設置し、これで40坪程度の建物であれば冷房を賄える技術が普及し始めています。冬は、同じ考えで床下に設置したエアコン1台で暖房可能です。
上記3点については、弊社では松尾式エコハウスという技術的な仕様と設計手法で実現できます。もし、ご興味がおありでしたら、以下の記事もぜひご覧ください。
#住宅内の熱中症対策 #住宅の温湿度管理