もし家を建てるなら
住宅の高気密高断熱化は、消費エネルギーを低減する省エネ性はもちろん、そこに住む人の健康や過ごしやすさにも大きな影響を及ぼす重要な要素です。
近年、建物を高気密高断熱化することへの関心が、新築、リフォームの種別を問わず、戸建木造住宅を中心に建築業界で活発になっています。この動きは、業界だけでなく新築やリフォームをお考えのお客様側にも顕著で、日本の戸建住宅業界の常識が変わりつつあることを感じさせます。
今回は、高性能住宅に欠かせない高気密高断熱という気密性能、断熱性能について基本的な考えや知識をお話ししていきます。
1.高気密高断熱住宅とは
建物の「隙間」と材料を通じた屋内外の「熱の移動」をなるべく小さくした住宅です。隙間のなさが気密性に、熱の移動のなさが断熱性に影響します。すなわち、隙間がなく熱の移動がない住宅が究極の高気密高断熱住宅となります。もちろん、実際に無くす(=0)のはほぼ不可能ですが、理想を追い求めることが高い気密性と断熱性を実現するのです。
さきほど「なるべく」と書きましたが、これは住宅を建築する際に守らなければならない法律、つまり建築基準法や施行令に気密断熱に関する定義がないためです(驚くべきことに・・・)。その代わり、「建築物省エネ法」という別の法律で定める省エネ性能の一つ外皮平均熱貫流率(UA値(ユーエーチ))を断熱性能の指標としています。
また、専用の機器で建物から漏れる空気量を測定することで分かる隙間の総面積を気密性能の指標とし、相当隙間面積(C値(シーチ))といいます。
つまり、高気密高断熱住宅とは、外皮性能が高く相当隙間面積が小さな住宅ということになります。
さて、賢明なあなたはこう思いましたね!?
「え?高気密高断熱と言えるための数値的な基準はどうなっているの?・・・ってか、相当隙間面積は何となく分かるけど、外皮平均熱貫流率ってナニ?」と。
ご安心ください。これらからお話しいたします。
※以下、外皮平均熱貫流率は「UA値」、相当隙間面積は「C値」と表記します。
2.高気密高断熱住宅の基準
まず数値的な基準ですが、さきほどお話しした通り建築基準法や施行令には気密断熱に関する定義がないため、基準となるような数値は当然ありません。そこで、断熱性については先の建築物省エネ法に定めるUA値を住宅の断熱性能の基準として見るという考え方があります。
その場合、建築物省エネ法の基準となるUA値が高断熱住宅と判断するための基準にもなり、それは地域区分ごとに下記の数値になります。
外皮平均熱貫流率の基準値
地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
W/(m2・K) | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | – |
地域区分というのは、日本の国土を「通年の気候が同程度」とみなす地域ごとに区分けしたものです。
南北に長い日本の国土は同じ季節でも地域ごとに気候の違いがあり、基準とするUA値もその地域の気候にあったものとする必要があるためです。例えば、九州鹿児島市の気候による断熱基準をクリアした建物も、北海道名張市では全く断熱性能が足りないことは明らかで、地域区分はその様な気候の地域差を考慮したものです。(ちなみに鹿児島市は7地域の0.87、名張市は1地域の0.46が基準。)
省エネ地域区分
ところで、先の文章で「考え方があります。」と書いたのは、住宅に定める気密性能や断熱性能の基準が、国だけでなく業界としての統一見解(デファクトスタンダード)もないので「これです!」と言い切ることができないからです。
では、C値の基準についてです。
こちらは、国の基準はおろか建築物省エネ法にも定めがありません。1999年(平成11年)に制定された次世代省エネ基準で登場したC値ですが、そもそも実際に建てた建物での実測値でしか明らかにできないことやその他の様々な理由により、2009年(平成21年)の基準改定の際に削除されてしまっています。
とは言うものの、高気密高断熱を謳う以上、C値は気密性能を語る上では欠かせない指標であることも事実です。
高気密と言えるC値の基準としては、(業界に)様々な意見や考えがあることを承知の上で言えば、1.0を切る建物と理解しておいて問題はないでしょう。この1.0という値の単位は㎠/㎡で、35坪(約116㎡)程度の家なら建物全体で116㎠の隙間となり、これは面積が148㎠のはがきよりも更に20%以上も小さな隙間しか空いていないということなのです。
3.UA値とは?
C値が建物の隙間の総面積の実測値であると前半で述べました。では、UA値とは何でしょう。
UA値は外皮平均熱貫流率のことで、その外皮とは住宅の外部に面する床、外壁、屋根、つまり室内と屋外とを分ける部位をいいます。そして、外皮を通じて逃げていく熱量を、その外皮の表面積当たりの熱損失量として表した値がUA値です。これもC値同様、値が小さいほど高性能となります。
4.気密性、断熱性の業界基準はあるのか?
先の文章で、気密性や断熱性の業界基準はないと書きましたが、これは戸建住宅業界全体を見た一般論としての話です。実は、同じ戸建住宅業界でも高気密高断熱にこだわる建築会社とそうではない所との区別が出始めており、前者のこだわり派建築会社界隈では、業界基準といえる値が共通見解として認識されつつあります。
当社の施工エリアである愛知県名古屋市や静岡県浜松市が所属する地域区分6の地域においては、この基準が、C値は先に述べた1.0㎠/㎡で、UA値は0.46W/(㎡・K)です。このUA値は、先の外皮平均熱貫流率の基準値の表では、地域区分の1~3地域という非常に寒冷な地域に設定されている値です。また、0.46という値は、この表を定める建築物省エネ法をはるかに上回る高性能住宅を目指す「HEAT20」という団体が、住宅に定める断熱性能の基準の内の一つでもあります。
5.まとめ
高気密高断熱住宅について、かなり思い切った概要を述べてきました。
まとめると、高性能住宅に欠かせない高気密高断熱とは、C値(相当隙間面積)1.0㎠/㎡、UA値(外皮熱寒流率)0.46W/(㎡・K)をクリアした建物となります。(※UA値については地域区分の違いによる目標値の違いはありますので、ご注意願います。)
建物の高気密高断熱化は、とても奥が深いテーマです。当ブログでも、関連する記事をいくつか書いておりますので、ご興味がおありでしたら、そちらもぜひご覧ください。(過去の記事なので、本記事と違う基準が記載されている場合があります。ご了承ください。)
#高気密高断熱 #高性能住宅 #UA値